午前中からボウリング大会に出ており、なかなか悪くないスコアを出して、気分よくホールに足を運んだ。アファナシエフの演奏を聴くのは2回目。極端に遅い演奏で独自の解釈を展開する鬼才ピアニストだが、前回の大阪公演ではそんなに極端な遅さは感じられなかった。所有しているCDはどれも演奏が遅く、もはや悟りを開いた境地とまで思えるほど。今日の演奏も遅いものを期待していたのだが。
前半ドビュッシーに始まりドビュッシーに終わるというシンメトリーなプログラミング。曲調もそうだが、演奏自体も非常にシンメトリーになっていて完全にアファナシエフの世界が展開されていた。期待したテンポはそれほどでもなく、むしろ速いとさえ思えるほどだった。おまけに暴力的とまで感じるような強烈なタッチでショスタコーヴィチを頂点として繰り広げられた。あまりの緊迫感に、曲間で拍手や咳き込みなどもなく、一気に前半を突き通した。全く付け入る隙はなかったですね。
後半は「展覧会の絵」。パンフレットを読んでもよく分かってなかったのだが、「音楽劇」というタイトルが引っかかっていた。アファナシエフが舞台に現れるや、ピアノには向かわず、ピアノの前に置かれたテーブルと椅子の方に向かう。そして、置かれていた楽譜やファイルを眺めつつ、椅子に掛けてあったガウンを身にまとう。椅子に座ってしばらくしたのち、おもむろに語り始める。どうやら本当に「劇」のようだ。ようやく意図がつかめてきた。ムソルグスキーの役を演じているとのことだが、それだけでなく、アファナシエフ自身も投影したような不思議な解説とも回想ともいえない語りだった。その合間に「展覧会の絵」が演奏される。劇中での演奏ということもあるためか、アファナシエフが演奏するためか、相当普通の演奏とは異なり、奇抜な演奏が展開された。これほどまでに原型を自らの解釈で崩して再構築する演奏には大いに感心した。ピアノの勉強のためか、子どもの姿もちらほら見られたが、全く参考にならないどころか教育上良くないのではないかとさえ思えた。曲をよく知っているファンにとってはこんな面白い演奏はないですけどね。
最後の「キエフの大門」が終わった後、拍手やブラボーが出たが、私は反応できなかった。なぜならまだ演技が続いているように感じたからだ。案の定、まだアファナシエフはムソルグスキーのままであり、またガウンをまとって椅子に座り、ウォッカの入ったグラスを手に、死ぬ寸前のアル中のムソルグスキーを演じて暗転、終了した。割れんばかりの拍手に応えるアファナシエフも心持ち満足げだった。
終演後引き続き1時間ほど、アファナシエフによるアフタートークの時間となった。京都造形大の先生との対談形式で、音楽劇の成り立ちやその意味するもの、ムソルグスキー談など盛り沢山なトークが繰り広げられた。分かりにくかったですけどね。。。
やはり普通のことをやらないピアニスト、アファナシエフ。刺激が欲しいクラシックファンは見逃せませんよ。
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