予定が空いていたので急遽行くことになった「サロメ」。沼尻さんのオペラは初めてなだけに大いに期待していた。連休中ということもあるのか、会場は満員ではない。暗い内容のオペラなのも影響していたのか?
さて、今回の演目「サロメ」はご存知の通り、精神異常な王女が主人公のスリラーなお話。とりあえず全曲を通して聴いた感想は、音楽が素晴らしく劇的で心を揺さぶる名曲だということ。長大な交響詩を聴いているかのよう。さすが、R.シュトラウスだ。話の内容については言うまでもなく変質ぶりが炸裂なのだが、今回の演出は初心者にも分かりやすい工夫が多く見受けられた。
まず、時代設定はほぼ現代。最初にブランコに乗った少女が現れる。原作ではそのような配役はないが、サロメの子ども心を象徴するものとして最後まで登場する。つまり、それは気まま、ワガママな子ども心、または、満たされなかった暖かい家庭への憧れのようなものだと思う。サロメはただの精神異常者というのではなく、産まれ育った家庭環境が彼女の精神異常を産み出してしまったというのだ。時代設定が現代というのも、時事を反映しての分かりやすい解釈にしたということなのだろう。
そう見ていくと非常に明解なストーリーだ。異常な話だと思っていたが、ずいぶんスッキリと理解することができた。舞台上の演出や、衣装には少なからず違和感があったが。特に「7つのヴェールの踊り」は異色の演出だった。まず、全く妖艶な踊りは出てこない(笑)。サロメが両手で顔を覆うと、妄想?シーンに突入する。幸せな家庭で父親の誕生パーティを祝うという場面だ。ケーキを囲み、幸せ一杯の風景が繰り広げられる。ご存知のあの音楽とは全く異質でミスマッチ。クライマックスで再びサロメが両手で顔を覆うと元のシーンへと戻った。ここまでやるか? 脱げとは言わないが、あまりの意訳シーンに驚いた。
しかし、何より沼尻さんと大阪センチュリーの演奏が素晴らしかった。やはり聴きモノは「7つのヴェールの踊り」以降のクライマックスだ。大阪センチュリーは沼尻さんの棒に喰らい付いて見事なまでにキレのある快演だった。幾分ソフトな演出だったにもかかわらず、最後の「あの女を殺せ」とサロメに向けて告げるシーンでは音楽のバワーもみなぎり、ゾクゾクっとして息が詰まった。
演出には賛美両論あろうが、この話の裏側に隠された意味を露骨に表現したのはスゴイと思う。
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