大阪センチュリー交響楽団創立20周年の記念演奏会。記念にふさわしく、なかなか演奏されない大作に挑戦とあって1年前からずいぶん楽しみにしていた公演だ。しかし、やはりマニアックな曲のためか客の入りは7〜8割程度だったのが意外。チケットがいつもより割高だったのも原因か。
さて、今日の演奏会はセミステージ形式。舞台で目を引くのはクワイヤ席の中央にそびえる白いピラミッドのようなモニュメント(火刑台?)だ。炎とは逆の青い照明を基調としていたのが印象的。オーケストラの配置に特殊なことはないが、ヴァイオリン最後尾にオンド・マルトノがあるところが違う。開演前から期待感が高まる。
静かに始まるプロローグは、少人数の合唱団のささやくような歌が弱いながらも効果的に感じた。合唱団はオーケストラの後ろだが、登場人物は2手に別れて登場した。ジャンヌ、ドミニク、天上の声はクワイヤ席。敵対する裁判官などはステージ最前列だ。間に挟まれた合唱団は民衆的な立場なので、狭いながらもエリアをうまく使い分けていたのには少し感心。やはり目を引いたのはジャンヌ役とドミニク役か。特にドミニク役は急遽出演者の変更ということで、ファヴォリが代役することになった。このソリスト、「火刑台上のジャンヌ・ダルク」の名盤として名高い、セルジュ・ボード指揮チェコフィルの録音でもドミニクを演じているハマリ役だ。これはうれしい誤算であった。主役2人に負けない歌を聞かせたのが、豚役(裁判官)の高橋さんだ。鋭くキレの良い歌声には正直驚いてしまったほど。
オネゲルは短くて展開の速い曲を目指していたとのことなので、忙しいくらいに展開が速い。その分音楽もストーリーも濃厚で全く飽きさせることなく楽しめた。細かな展開はさておき、クライマックスの火刑台のシーンでは、ジャンヌの叫びとともに、白いピラミッドの中央が動き、キリストを象徴する十字架が現れた。まったく言葉では表せないほどの感動的な演出でもあった。今まで演奏会で涙することは少なかったのだが、思わず涙が出てしまった。たぶんゴミが入ったのだろう・・・。
最後は照明が徐々に暗くなって完全に闇に包まれて終わった。会場からは感動に満ちた拍手が盛大に送られていたように思う。こんな貴重な演奏会を1000円で聴いたのはかなり申し訳なく思ったが、こういう企画をしてくれる大阪センチュリーならびに沼尻さんには本当に頭が上がらない。今後も是非挑戦を続けてもらいたい。
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