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コンサート名・公演名

2005年10月23日 フィンランド放送交響楽団
(京都コンサートホール)

演奏曲目および評価

シベリウス  交響詩「夜の騎行と日の出」
シベリウス  交響詩「吟遊詩人」
シベリウス  交響詩「四つの伝説曲」より「トゥオネラの白鳥」
       同 「レミンケイネンの帰郷」
シベリウス  交響詩「フィンランディア」
マーラー  交響曲第4番






演奏者(指揮者・ソリスト)

ソプラノ: ファニータ・ラスカッロ
指揮: サカリ・オラモ

感想・短評

フィンランド放送交響楽団、サカリ・オラモという、決して万人向けとは思えない渋い組み合わせなので、今日もあまり観客が入らないのじゃないかと想像していた。ところがどっこい、8割以上入っていたかな? みなさん耳が肥えてます。私のような素人の余計な心配は必要なかったです。

さて、オケ・指揮者・曲目、ともに今シーズン最も注目すべき組み合わせな上、前半はオールシベリウス・プログラムという定番かつ意欲的な内容。シベリウスの手本とも言うべき演奏の数々で、当然文句の付けようはない。それどころか、オケの上手さには正直びっくりしました。CDで実力の高さを十分知っていたはずなのだが、透き通るような透明感のあるヴァイオリンの美しさは録音では分かりません。それも決して冷たい音ではなく、やわらかい音色。木管は素直で飾り気のない美しさ。それでいて、低弦は大地を揺るがすようにしっかりと鳴り響く。各パートがとても丁寧に溶け合うように折り重なっていた。これぞ「美しいハーモニー」と言えるのではないだろうか?

サカリ・オラモ
サカリ・オラモ

オラモの指揮は、3年前にバーミンガム市響で聴いたとき同様にロマンティックでしっかりメロディを歌わせていた。これも元コンマスの成せる業? これだけゆったりと歌いながらも、決してくどくならないのは前述のオケの特徴も大きいのかも知れない。さらにすごいと思ったのは、ピアニッシモと休符(間)の使い方の上手さだ。若手の指揮者なのに巨匠のような指揮をするところがニクイ。前半はどの曲も甲乙付けがたいが、「吟遊詩人」は秀逸だった。低弦のふくよかな響きとハープの繊細な響きの組み合わせはこんなに美しいものなのかと思った。意外だったのは「フィンランディア」。他の曲に比べてテンポも速く、起伏も大きく取っていた。これが本場の演奏なのかもしれない。

後半はマーラー。3年前に「コンサートにおけるマーラー交響曲完結!」と誇らしげに書いた記憶があるが、実は「プロのオーケストラ」という条件をつけると、今日の4番で真の「全曲制覇」になるのだ。この記念すべき日に、予想を超える名演で答えてくれた、オラモ=フィンランド放送交響楽団。第1楽章こそは木管の不安定さが目立ったが、そのあとはほぼ完璧といっていいほどの完成度。この無垢で天上の美しさを持つ曲と、素直で透明感あふれるフィンランド放送交響楽団の音色が見事にマッチングしていた。特に素晴らしかったのは第3楽章。ゆったりとしたテンポで平和な時間が過ぎていく。眠くなる楽章の筆頭に上げられる曲だが、気持ちよく聞くことができた。第4楽章ではソプラノの歌唱力が今一歩だったのは残念だが、音が消え行くフィナーレはまさに天国に上ったような感覚で、心が洗われる稀有な演奏だった。

マーラーの後なのでアンコールは難しいが、美しい曲を披露してくれた。

  シューベルト 劇音楽「ロザムンデ」より間奏曲第3番

こちらも派手さを誇示するのではなく、あくまで美しい演奏で気持ちの良いアンコールだった。オラモの指揮はいつも何か新しい曲の聴き方を教えてくれる。なかなかメジャーになり切れていないが、今後は必ず大成する指揮者だと思うので、ずっと注目して行きたい。

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