来日を果たしていなかった数あるオーケストラのうちのひとつ。グスタフ・マーラー・ユーゲント・オーケストラ(GMJO)。名前が示すとおり若い奏者によって構成されている団体である。しかし!ただの青年オケと考えたら大間違い! 恐るべき実力を持つスーパーオーケストラなのだ。それもそのはず、このオケの創設者はクラウディオ・アバド。そしてそのオケの指導にはウィーン・フィルやベルリン・フィルのメンバーが当たっている。指揮もアバドやヤンソンス、小澤、ブーレーズなどそうそうたる巨匠たちがするのだから、上手くないはずはない。さらに今回の演奏会は、ルツェルン音楽祭との共同企画となっており、来日の数日前に音楽祭で演奏したプログラムをもって乗り込んでくるのだから期待大。さらにさらに、今回の来日ではあのブーレーズが同行する。大阪のザ・シンフォニーホールに初登場ということもあり、心して演奏会に臨んだ。
オケがすごいのか。ブーレーズがすごいのか。全曲にわたって凄まじいまでのパワーと緊張感みなぎる演奏が繰り広げられた。聴いている方もかなりのエネルギーを消費するような演奏は、昨年のニューヨーク・フィル以来だ。さすがにまだ荒削りで洗練されてはいないが、雰囲気的には「ベルリン・フィル予備軍」といってもいいのではないだろうか? このオケは毎年メンバーの入れ替えが行なわれているというのだから、これほどのレベルを維持するのも大変だ。
前半はベルクとヴェーベルンの演奏。ブーレーズのことだから現代曲を現代曲らしく難しげに説くのかと思いきや、非常に明確に説きほぐした演奏となっていたので驚いた。まるで古典の曲かのように分かりやすく、スッと受け入れられる解釈に感動してしまいました。現代曲特有の金属的な冷めたイメージや暗い影のあるイメージとは異なり、人間的で厚みのある演奏となった。これはオケの若さとパワーのためもあるのだろうが。。。そういうわけで、いつもと違った現代曲を聴けて楽しかった。ヴェーベルンも同様。昨日の大阪センチュリーとの聴き比べは無意味なものかもしれない。レベルが異なるからだ。オケの人数もGMJOの方がはるかに多かったが、実力差も大きい。第2曲のヴァイオリンの倍音を一つ取ってみても違いが歴然としていた。まぁ、どちらも個性があっていいんだけど。
圧巻はやはりマーラー。ブーレーズの「悲劇的」といえばウィーン・フィルとの演奏があまりにも有名だが、その演奏とはまた異なるものだった。何しろ、非常にテンポが速い! 息つく暇もなく次々とフレーズが繰り出される。特にすごかったのは第1楽章と第4楽章。あまりの熱狂とオケの音圧に久々に体が固まりました。ちょっとやり過ぎかな・・・と思う節もありましたが。この曲の見所は・・・そう、第4楽章にブッ放される「ハンマー」。四角い台のようなものを赤いハンマーで壊れるくらいにブッ放していた。強打の衝撃でかなり台の場所がずれていた。。。
終結部のピチカートが終わるや否や、会場は割れんばかりの歓声に包まれた。熱狂である。団員も熱狂である。軍隊のような足踏みでブーレーズを呼び戻すのだから。久々のスタンディング・オベーションに今日の演奏の充実感を味わった。終演後はいつものように楽屋口に。サインをもらうのは無理かと思っていたが、ブーレーズは優しかった。ちゃんとサイン会を開いてくれました。驚くほどの小さなサインでしたが(笑)。しかし、今日は貴重な1日を過ごすことができた。次回GMJOを聴くのはいつになるだろう。ライヴの醍醐味を最もよく味わうことのできるGMJOによる一期一会の演奏会。違う驚きと感動をまた味わってみたい。
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