大いに楽しみにしていた演奏会だ。それもそのはず、ただのPACの定期演奏会ではない。今をときめくマーラー・チェンバー・オーケストラ(MCO)との合同演奏で、マーラーの交響曲第3番をやるとなれば誰もが期待するところだろう。MCOとは言わずもがな、ルツェルン祝祭管弦楽団の中核をなすオーケストラであり、世界最強のユースオケ、グスタフ・マーラー・ユーゲント・オーケストラの親分的な団体である。過去にこれらの演奏会で度肝を抜かれているため、今回の合同演奏はどうなるのか大いに楽しみにしていたのだ。
当然、ホールは満席状態。まぁ、話題といえ、ここまで集客できるPACの戦略もスゴイものがあるのだが。オマケに今日の指揮の佐渡さんは、ベルリン・フィル定期への初出演凱旋公演ともいえる。冒頭、その興奮を存分にトークで伝えてくれた。
さて、注目の演奏の方は、少しばかり期待はずれなものだった。やはり寄せ集め感が表に出てしまい、統一した響きにはなっていなかった。冒頭、ゆったり目のテンポで開始するが、かえってギクシャク感が強調されてしまった印象。オマケに佐渡さんの指揮はフレーズごとに分断してしまうような感じで、音楽の流れが今一つ良くない。ようやく流れてきたのは第1楽章も中盤を過ぎた辺りだろうか。まぁ、バンダのスネアとかはホール内で演奏するよりも目立っていたのは気に入らなかったが。
各プレイヤーも取り立ててスーパープレイを繰り出すわけでもなく、いつものPAC定期らしい様相を呈していた。唯一聞き耳を立てたのが、第3楽章のポストホルンだろう。いい感じでした。今回もう一つの聴きモノは、第4楽章で登場するメゾ・ソプラノのミッシェル・デ・ヤングだ。2005年のサイトウ・キネンの「グレの歌」で素晴らしい森鳩の歌を耳にして以来、存大な信頼感を置いている歌手なのだ。2002年のコンセルトヘボウの来日公演でドタキャンとなってしまったので、マーラーを聴くのはリベンジでもあった。そのヤングは以前よりは巨大化していたが、歌唱力は堂々たるものだ。出番が少ないのは残念極まりない。
そして感動の最終楽章。ベルリン・フィルやルツェルン音楽祭などのスーパーオケと比較するのは野暮だが、そのとき感じたような壮大な音場空間に包まれることはなかったが、良い曲であるのは確かなので瞑想気分で感動に浸っていた。しかし、やっぱり日本の聴衆は曲の本質を分からない人が多いね。フライングとは言わないまでも、最後の音が鳴り止んで1〜2秒で拍手が出た。この曲は余韻を味わってナンボの曲の筆頭株主ともいえる代表曲なのだ。なのに、拍手でそれを壊したら、曲の半分は楽しめなかったといっても過言ではない。いい加減に覚えてもらいたいところだ。ルツェルンで聴いたときは1分近い沈黙があったくらいだから。
最後はともかくとして、心底からの名演を期待しすぎたために消化不良になってしまったが、そう耳にはできない長大な曲を聴くことができて幸せなことはいうまでもない。来月には京響でも体験できるので、マーラーイヤーならではのプログラムをまた楽しみたい。
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