意外にも初めて聴きに行くイスラエル・フィル。メータの指揮は昨年のウィーン・フィルで聴いているので、オケ違いの聴き比べとなる。しかし、ビッグネームでも人は満員にはならないこの悲しい現実。チケットが高すぎる(S席が19000円、最安席でも9000円する)のもあるが、経済状況と関西の文化価値の低下が原因と思われる。プログラム的には満員御礼でもおかしくないのだが。。。
そのプログラムは実に満腹メニューだ。最初は「春の祭典」から。意外に久しぶりだなぁ。演奏は意外というか、当然というか、なかなかに美しいものだった。ストラヴィンスキーで美しいというのは違和感があるが、スリル感の少ない安全運転だったからだ。乱暴に言えば、メータの指揮は面白味に欠ける。その分、演奏技術の高さを楽しむことができたのはちょっと皮肉か。弦楽器の美しさに定評のあるイスラエル・フィルだが、金管と打楽器が大充実だったことの方を喜んだ。ティンパニは上手いねぇ。久々に感動しました。冒頭のファゴットは印象が薄く怪しさが足りなかったので残念だったものの、第1部後半から曲全体に推進力が出てきたので一安心。危険な賭けをせず、手堅く丁寧な演奏は安心して聴いていられた。気に入らなかったのは、ティンパニの2番手にいたトラの日本人か。腕を組んでエラそうに見えた。
後半はマーラー。前半でラーメンを食べたのに、後半はカツ丼といったところか。こっちも主張はなく純音楽のマーラー。面白味はないが素直で実に耳に優しい。第1楽章はなかなかの秀演だった。さぁ、第2楽章はどうかな?と思った矢先、事件が起きた。耳慣れたワルツではない曲が始まったのだ。やられた!下調べ不足だった。うれしい誤算の「花の章」付きだったのだ。トランペット首席がめちゃウマで、驚きの美しさだった。ウィーンの雰囲気が漂う感じでした。この楽章だけでも大いに価値あった。通常の第2楽章(ワルツ)はそれに比べて味気なかった。通常の第4楽章は起伏がないものの、痛快で迫力ある演奏でした。やっぱりトランペットは素晴らしかったですが、異彩を放っていたのは、例のティンパニの2番手。強打強打の連発で、トップよりも目立ってました(いいのか?)。ちょいとやり過ぎ感はあったが、豪快で見応えがあった。
いいマーラー演奏のあとだったので、メータも満足していたみたいでアンコールをする気がなかったみたいだけど、ヤル気満々のオケの後押しで、仕方なくアンコールをしてくれた。
ムソルグスキー/歌劇「ホヴァンシチナ」より前奏曲
メータはこういう曲があっているのだろう。メインディッシュのあとに、さわやかなシャーベットが出た感じ。うまいオケの特徴ともいうべき、最弱音をホールいっぱいに響かせてくれました。
やっぱり一流オケは懐が深いです。あまり乗り気でなかった今日の演奏会、終わってみれば大充実で心満たされた気分になりました。
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