私のお気に入りのピアニスト河村さん。日本人ではナンバーワンだと信じているピアニストだ。西宮出身でもあるので、今回の演奏会は地元での凱旋公演でもある。そのためのあるのか、大ホールでの開催というのに客席はそれなりに埋まっていた。ムターの時とは大違いだ(まだいうか?)。チケットも安いことが魅力の一つだが、プログラムもなかなかの聴きごたえがある意欲的なものだ。
前半はドイツものよりどり。最初のバッハは高尚過ぎる曲なので評価はできないのだが、何となくバッハらしさは薄いように思った。ピアノ演奏としては素晴らしいとは思うけれど、少しテンポを変えてみたり、強弱を付けてみたりというのがどことなく作為的に感じてしまった。バッハは本当に難しい。次のベートーヴェンは一番素晴らしい演奏だと思った。河村さんのピアノはしっかりとした芯を持っているので音色が安定していてどっしりとしている。変奏曲では基礎が安定している分、その展開が不安定にならないということなのか?実にドイツ的なベートーヴェンで良かったです。ブラームスも同様。ただ、この曲はアファナシエフの奇演に聴きなれてしまっているので、正攻法で来られると少し退屈な感じを受けてしまった。これは聴き手の問題です。
後半はショパン。高い技巧を要求され、激しく情熱的に演奏されるバラード。非常に聴きごたえのある作品。4曲まとめて聴けるのは意外にないのでは?技術的には全く難の無い河村さんなので、満足な後半プログラムでした。個人的には第3番の演奏が一番良かったかな。強いて言うとするならば、ドイツ的な演奏と思ってしまうからか、どうもドイツ香るポーランド音楽という違和感があるように聴こえてしまったことか。そんなことはどうでもよくって、いやはや圧巻の演奏でした。
アンコールは2曲。聴いたことがあるのに曲名が出てこなかったのは情けなかった(涙)。
シューベルト:楽興の時より 第3曲
J.S.バッハ:羊は安らかに草をはむ(狩りのカンタータ BWV208)
やっぱりドイツものは良い感じでした。しかし、涼しい顔してよくもこんな難曲を弾きこなせるものだと、つくづく感心した。これからの活躍にますます期待がかかるそんな演奏会でした。
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