このコンサート。最初組み合わせを見たときはあまりの大物にビックリしただけでなく「個性のぶつかり合いで合わないんじゃないの?」と正直思いました。それだけに興味津々でチケットをとった。大阪でのコンサート(特に昨日のゲルギエフ&マリインスキー歌劇場管弦楽団とか)は、客の入りが悪いだけに、超満員の兵庫芸文ホールは目に珍しく映りました。
いつもホールの右サイドの席を好んで買うのだが、今日の公演に関して言えば「大正解」でした。ツィメルマンの表情をバッチリ見ることができるだけでなく、クレーメルもツィメルマンの横に並んで弾く格好となっていたため、どちらも良い角度で見ることができた!最安席ブラボー!
さて、最初の1曲目はちょっと肩透かしを食らった感じでした。クレーメルはあまり調子が乗っておらず、音楽が流れていなかった。ミスも多く、決して美しい演奏とはいえなかった。しかし、それに比べてツィメルマンは素晴らしかった。最初の1音から完全にその音色に魅了された。角が全て取れた、優しさに満ち溢れた音色。クレーメルとの相性は?だが、曲の深みや安定感は全てピアノが決定付けていたといっても過言ではないと思う。ブラームスがスイスのトゥーンで作曲したというこの曲。この夏に行ったスイスの情景が目に浮かび、幸せな感覚でした。
2曲目の第3番はクレーメルの面目約如でした。ようやく本来の調子が出てきたようでとてもイキイキとしていました。特にクレーメルが素晴らしいのはその早弾きでもあるが、複数の弦を同時に弾く音色の美しさは、他の真髄を許さないものです。特に第2楽章は「極上」という言葉がふさわしい演奏でした。
後半のフランクは名演といって差し支えないでしょう。ほぼ完璧なまでの表現力でした。前半のクレーメルとは全くの別人のようなほどノリにノッていました。第2楽章、第4楽章の畳み掛ける弾きっぷりもすごいが、第3楽章の美しさといったら言葉にできません・・・。聴いたことない曲だったので、CDを買ってこの1週間聴き込んだ甲斐がありました。知らずに流して聴いていたらもったいなかった!
この演奏を聴いていて「2人ともカリスマの塊」と思いました。特にツィメルマンは神経も繊細なのだろう。観客の咳払いも気になっているように見えました。事実、第2楽章のあと、咳払いが聞こえるや否や、唐突に第3楽章に突入しましたから。曲の流れやタイミングには特にこだわっている演奏家なのだと思う。観客もそれを承知で演奏会に臨みたいところだ。
アンコールは2曲の太っ腹。
モーツァルト/ソナタ第39番より第1・2楽章
ニーノ・ローザ/「甘い生活」(映画音楽)
モーツァルトは軽やかで優しい演奏でした。簡単そうに聞こえて、かなりテクニックがいる曲なのでは?と思いました。ニーノ・ローザの曲は「繊細さここに極まれり」といったところで、倍音の美しさには本当に聞きほれました。「色っぽい弾き方だなぁ」と感じましたが、曲目を見て「なるほど」と思いました。
当日は兵庫芸文ホールの入場者100万人突破のセレモニーがあった。私がホールに着いた時にはすでにクス玉も割られていたが、人に聞いたところによると、佐渡さんもお祝いに駆けつけていて挨拶があったらしい。あぁ、もっと早くにホールに来ていれば・・・100万人目になったかもしれないのに(それはないか)。
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