平日の演奏会というのに会場はかなり埋まっていた。それもそのはず。ソリストとしてイッサーリスが登場するからだ。2日前にガット弦によるモザイク・カルテットの演奏を聴いているだけに、ガット弦ずくめの1週間となった。そもそも今日はニューヨーク・フィルハーモニックの来日公演を聴きに行くことにしていたが、急遽こちらの演奏会に変更した。プログラム的には何度も聴いている曲だけど、よくよくCDで聴いているとクラリネットがあまりにもおいしい曲ではないか! スタンリー・ドラッカーよりも小谷口さんの演奏を選択したってことですね(笑)。
さて、ガット弦による演奏。音量が乏しいためにP席で聴いていた身分としてはあまり堪能できたとはいえない。それでもイッサーリスの演奏は雄大で、甘いドヴォルザークのメロディが一層甘く優しく鳴っていた。やっぱり何といっても期待に応えてくれたのは第2楽章のクラリネットとチェロの対話でしょう。この曲は「チェロと木管のための協奏曲(とりわけチェロとクラリネットのための協奏曲)」といってもいいほど木管が活躍するだけに聴き応え十分でした。これだけでも来た甲斐がありました。イノウエさんの指揮は非常にわかりやすく、かつ気合いが入っていて楽員のやる気を起こさせてくれるような感じだった。堅実な中にもテンポや強弱をしっかりつけて聞き飽きることがなかった。終結部の甘くて切ないチェロのソロのあと、壮大かつ急激なテンポアップで曲を閉めた。良い終わり方です(ティンパニが最後残ってしまったのは残念)。
イッサーリスのアンコールは、ツィンツァーゼ作曲のチョングリという曲。あたかもアコースティックギターを弾いているかのような技巧曲でおもしろい曲だった。
後半は交響曲第8番。冒頭のチェロのメロディを聴いて正直ビックリした。京響のチェロはこんなに豊潤だったか? 至る所でそのような感覚を持った。第2楽章でのクラリネットのデュオ、第3楽章でのヴァイオリンによるメロディ、第4楽章での真っ直ぐなトランペット・・・ 先週聴いたウィーン・フィルのような完成された美しさは求めていないが、京響ならではのうれしい発見があるのは何よりも代え難い。イノウエさんはスケールの大きな指揮(音楽も身振りも)で、明快なのがよい点だと思うが、ずっと力が入っていたのでもう少し緩急を付けて欲しかった。もうひとつスリリングさも欲しいですね(何期待してんだか(笑))。
今日は個々の演奏が優れていて満足な1日だったと思う。
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