今年最大、いや今世紀最大とも言うべき大イベントがついにやってきた。いまや世界中の注目を集める「ルツェルン音楽祭」が日本で開催されるとくれば、クラシックファンであれば一度は聴いてみたいはず。それもポリーニ&アバド&ルツェルン祝祭管の競演は、これ以上のものが想像できない世界No.1の演奏会だ。当然チケット料金も史上最高額! S席は45,000円(プラチナ席は50,000円)という金額はオーケストラコンサートでは破格の高さだ。そんな高い席では聴けないので最安席のチケットを買っていたのだが、それでも17,000円。通常の一流オケのS席よりも高いくらいの金額だ。

マリオ・ブルネロ |
さて、早速演奏内容についての感想を書いてみる。正直言って、ポリーニのピアノは期待はずれというか、予想をはずされてしまった感じ。P席だったことも大きいと思うが、あまりグッと来るものがなかった。このところファジル・サイなどの過激なピアノ演奏を聴いているためだろう。何か物足らなさを感じてしまった。もちろん、上手いとか下手とかそういう次元の話ではなく、期待が大きすぎたためのギャップを感じたに過ぎない。驚いたのはオケの方。このウルトラ・スーパーオケは他のオケと比較できるものが何もないくらいスゴイ。始まったとたんに音楽の海に投げ出された感じで、そのうねりに飲まれるばかり。その昔、ベルリン・フィルでも感じたが、最強音はとてつもない威力にもかかわらず、決してやかましく響くことはない。おまけに最弱音は優しく小さいにもかかわらず、ホール全体に響き渡る音の豊かさなのだ。一番の聴き所は第2楽章のポリーニのピアノとブルネロのチェロによるメロディ。贅沢極まりない至福のひと時でした。しかし、どこを取っても簡単な言葉では表現できない演奏。完敗です。。。
後半のブルックナーはさらに圧倒されるほどの演奏だった。最初の弦のトレモロだけで名演は確信できました(早っ)。よく言われる教会音楽的なブルックナーではなく、実に人間的で懐深いアバドのブルックナー演奏。どこを切ってもスキがない。ブルックナー休止も豊かな残響で意味深い(サントリーホールもスゴイ)。あぁ、ブルックナーってこういう曲だったんですね。。。70分もの間、手に汗握り、体が震えるほどの感覚を覚えました。特にこのオケでないと絶対聴けないと思ったのが、第2楽章のヴィオラによる旋律。なんと言えばいいのか、「生身の音を聴いた!」って感じ。クリスト率いるヴィオラ軍団には心底シビレました。何の感想を書いてもチープな感覚しか表現できないのであきらめますが、数多く聞いているオーケストラコンサートとは明らかに一線を画した別モノでした。ビッグネームの集団であることや、高額なチケットであることに惑わされている部分があったとしても、演奏の評価は変わりません。
終演が21時40分を過ぎていたほど大充実のプログラム。あとになって考えれば、決してチケットが高いとは思えません。逆に、もっとお金を出して本場スイスに出向きたくなったくらいです。コンサートからの帰途だけでなく、その日の夢の中までブルックナーが頭の中で響き続けていた衝撃は忘れられない。。。
【余談1】今回は終演時間が遅くなることが予想されたので、団員にサインをもらうため楽屋口で入り待ちをしました(^^; おかげで多くの方にもらうことができて満足です。マエストロも現れましたが、さすがに関係者に固くガードされてしまいました。まぁ、笑顔で愛想を振りまいてくれただけでも満足でした。
【余談2】ルツェルンがスイスだということもあり?コンサートのスポンサーはネスレ。ホールのロビーではコーヒー(ゴールドブレンド)やチョコレート(キットカット)が無料で振る舞われた。驚きは、小ホールをもカフェバーに変身させていたところ。さすがネスレ。やりますね。
2006年コンサートカレンダーにもどる
|