フランスを代表するオケとまでは行かないが、現状のフランスのオケを考えると非常に充実した響きを持つ団体だと思った。
「マ・メール・ロワ」は絶妙なほど抑制の効いた演奏でかなりの秀演だった。どのパートも目立つことなく緻密かつ有機的に結びついた演奏で、おとぎ話の世界をよく表現していた。木管陣が優秀だったといえる(クラリネットに関しては少し息の音が気になったが)。クリヴィヌ氏の指揮は非常に明確で、弾むような仕種であった。指揮棒の先を固定して手首を動かすというスタイルが印象的。
2曲目「左手のための協奏曲」は今日のメインといえる。ピアノはティボーデ。これが聴きたいために今回のコンサートに来たといっても過言ではない。1曲目とは打って変わってオケが躍動する。それもよかったのだが、やはり驚きはピアノ。プロのピアニストでもこの曲を弾きこなせる人は少ないのではないだろうか。ティボーデの完璧なテクニックと、ダイナミズム、そしてなにより楽しんでいる!! 両手で弾くにしても難しいだろう。鍵盤で使っていないのは高音域の5音くらい! 驚いたのはティボーデのテクニックだけではない。靴下が真っ赤だったのにも驚いた!
3曲目はまたまた「ピアノ協奏曲」。協奏曲を2曲するというのも驚き。この曲でもティボーデの鍵盤ははじけた。この曲のもつ華麗さ、ロマンチシズム、ジャズスピリットを完璧に聴かせてくれた。この曲をバーンスタインは弾き振りをしたというのだから恐ろしい・・・
アンコールとしてティボーデはニューアルバム「プレリュード・ア・キッス」から2曲披露してくれた。ここでも超絶技巧を駆使したジャズを見事に聴かせてくれた。オケの団員も聴き入っていたのが面白かった。
最後は「ボレロ」。やっぱりこの曲はCDなんかで聴くより実際見る曲だということを痛感した。目覚ましく変わる演奏者そして編成。クリヴィヌは適度のテンポでうまくまとめ上げたが、熱狂にまでは変わらなかったのがちょっと惜しい。
サービスもよくアンコールは2曲あった。ビゼーの「カルメン」より「闘牛士の歌」、ドヴォルザーク「スラヴ舞曲第10番」。「カルメン」は実にあっさりとした演奏で、フランスらしい(?)と感じられた。スラヴ舞曲は大いに楽しませてくれた。今日出番の少なかった(というか目立たなかった)弦楽器が、ここぞとばかり深みのある音を醸し出していた。
いつものごとく指揮者とソリストにサインをもらった。クリヴィヌ氏はサインをしてくれた後、スラヴ舞曲を口ずさむほど上機嫌だった。
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