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コンサート名・公演名

2006年1月29日 マリインスキー歌劇場管弦楽団
(兵庫県立芸術文化センター)

演奏曲目および評価

ワーグナー  <ニーベルングの指輪>より
  <ラインの黄金>より「ワルハラ城への神々の入場」
  <ワルキューレ>より「ワルキューレの騎行」
  <ワルキューレ>より「魔の炎の音楽」
  <ジークフリート>より「森のささやき」
マーラー  交響曲第5番

演奏者(指揮者・ソリスト)

指揮: ワレリー・ゲルギエフ

感想・短評

1月にして、今年一番の注目公演がやってきた。ラッキーなことにチケットは早々に難なく取れたが、当然完売・超満員(補助席も出てた)のプレミアムコンサートなのだ。2004年にゲルギエフの名演に面を食らったので、本当に楽しみな演奏会である。開演前に舞台を見て「おやっ」と思ったことが2つ。1つ目は、今日のプログラムは比較的規模が大きいにもかかわらず、弦楽器の数が少ないように感じたのだ(コントラバスは多くて7本)。その割りに管楽器の数は多い。理由は演奏にあるのかな?2つ目は、指揮台がなかったこと。これが意味することは???

さて、前半はなかなか聞くことのできないリングからの抜粋。迫力の演奏を予想していたが、意外なことに実に緻密で繊細な演奏に徹していた。決して金管が咆えるようなことはない(もちろんしっかり鳴っていた)。「ワルハラ城への神々の入場」の神々の入場のシーンは劇的で派手なものを良く聞くが、あくまでも旋律を大事にしていた。最も注目すべき演奏は「魔の炎の音楽」「森のささやき」だ。特に「魔の炎の音楽」はワルキューレの終曲に当たるシーンとしてふさわしい演奏で、長大なストーリーを全て見たような錯覚に陥るほど、物語性を強く表現していた。ほんと、うまかった。もう1回聴きたい。「森のささやき」では木管の掛け合いが絶妙。そんなに好きな曲ではなかったのだが、この演奏で一気にとりこになってしまった。どちらの演奏も弱音を素晴らしく表現しており、オケのレベルの高さを満喫できました。

前半だけでかなりの満腹状態だが、後半はマーラーが控えている。聴く側も結構ハードなプログラムだ。案の定、体力の消耗戦になった。2004年にロッテルダム・フィルで聴いたマーラー9番の時にはゲルギエフの魔力に完全に打ちのめされてしまった。しかし、今回も激しくやられてしまったのだ。ゲルギエフは何かを暗示するかのように、ゆっくりとしたテンポでオケを操る。激しいというほどではないが、濃厚なまでの起伏が全曲を通して支配していた。これまでに聴いたことのないマーラー解釈であり、ロシアの伝統的なマーラー演奏でもあった。面白すぎるぞ。

オケの演奏は何の不満もないほど完璧なのでため息が出た。冒頭のトランペットの何とも美しいこと。ホルン、トロンボーン、チューバ、金管もパーフェクトな仕事を披露。最初は少ないとさえ思っていた弦楽器だって十分な音量で迫ってくる。全曲に渡って緊張感の高い、統一感のある演奏だった。その上、ゲルギエフの魔力のため息つく暇が全くない! 聞いている方はどこまで体力が持つのか。ほとんど闘いに近い。。。そんな中でも、長くて退屈気味になるはずの第3楽章は一番印象に残った。柔らかで可愛らしいくらいの表現が逆に不気味さを増幅させ、心臓がバクバクしていた(笑)。緊張を和らげるための第4楽章はオアシスのはずだったが、猛烈なまでの濃厚な演奏で聞き応え十分! あぁ休む暇がない(涙)。そして間を置かずに第5楽章に突入。一層うねるうねる。こんな面白いマーラーはこれまであっただろうか? もう思考能力は停止状態。「満漢全席を2時間で食え」というくらいの食べきれないゲルギエフ・フルコースに完全に参りました。曲が終わったと同時に客席からは大歓声が起きたが、どうやら皆もとりつかれていたのか「ブラボー」にはならず「うわおー」と声を上げていた。拍手は鳴り止むことはなく、挙句の果てにはホルン奏者を中央に引き出したりしてた。あー、激しいまでの豪演でした。当分はマーラー5番は聴きたくないです。

さて、終演後は2年前のリベンジ。1時間ほど待つことになったが、念願のゲルギエフのサインをもらうことができた。ものすごく上機嫌で、今回はオーラは出てなかった(笑)。完全に世界に引きずり込まれてしまうゲルギエフの指揮。演奏会に行くには心の準備が必要ですね!

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