通算2回目のN響。インバルの指揮を見るのは3回目だ。インバル得意のショスタコーヴィチものということで十分期待できるプログラム。さらに、今回は実際のN響定期公演の模様をテレビで予習して望んだ。今までは演奏会に行ってから収録を復習するというパターンがほとんどだった。それだけにどういう解釈かを聴いていた分、楽しみも少し減ってしまったかな?
さらに、今回は初めて神戸こくさいホールに足を踏み入れた。なかなか立派なホールでどの席も視界は良好。ただ、1階席3階席の後方は天井がかぶるため少し音響的に不利そう。全体的に残響は良好。すこし反射音が耳に触るところもあったが、柔らかめの音響は十分だと思った。
さて、ホールに関してはそれくらいにしておいて、今回のプログラムにおいての注目は、ヴァイオリンのシトコヴェツキ。放送で聴いた感じでは線が細めで迫力に欠けるように思った。しかしこれは全くの間違い。録音の悪さにごまかされていたようだ。実際は見た目の通り、非常に芯がしっかりしており力強さがあった。特に高音域における安定性は抜群で、決して頼りなくならず、張り付くようななめらかさを持つ特徴があった。ショスタコーヴィチ特有の重量感を醸し出す低音域は多少不安なところもあったが、それは取るに足らないこと。インバルの指揮がかなり丁寧に細部まで行き届いていたために、全体的にスピード的には遅かったものの、それが第3楽章のカデンツァをより際だたせるものとなっていた。あの大きなホールを十分に鳴り響かせる音量にはただ聴き入るのみ。恐れ入りました。N響の方はソリストに少し遠慮してか、ちょっとボリューム感がない上に、少し重たくて機動力に欠ける感じに思えた。ただ、第2楽章の冒頭、バスクラ、ファゴットなど、木管陣の実力の高さにはただ感心。
メインのショスタコーヴィチも、終始じっくりと聴かせる遅いテンポ。最近のこの曲の演奏はやたらと速さや勢いを強調するものが多いような気がしているが、これくらいゆったりしているのは、何か違う面が見えたりするので面白い。速かったのは第1楽章後半部と第4楽章中間部くらい。インバルらしく、細部までくっきりと描いていたのが非常に印象的だった。N響の演奏も圧倒的で、さすがに日本ではトップという感を強くしてくれた。第2楽章冒頭の低弦の迫力といい、木管陣の完璧でボリュームのある音色といい、第4楽章冒頭での金管の非常に美しく凄まじいまでのパワーといい・・・。N響の底力を見た!(聴いた?)といっても過言ではない。
今年の冬にはデュトワによる演奏が京都で行なわれるので、ますます目が離せないN響である。

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