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コンサート名・公演名

2002年6月22日 ニューヨーク・フィルハーモニック
(京都コンサートホール)

演奏曲目および評価

ワーグナー  楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」
       より第1幕への前奏曲
ワーグナー  歌劇「タンホイザー」序曲
ブルックナー  交響曲第3番「ワーグナー」(ノヴァーク1889年版)


 

演奏者(指揮者・ソリスト)

指揮: クルト・マズア

感想・短評

クルト・マズア

コンサートマスター
グレン・ディクトロウ

首席ホルン奏者
フィリップ・マイヤー

半年前からチケットを買っていたこの演奏会がようやくやってきた。マズアにとってはニューヨーク・フィルとの最後のツアーになるため、集大成ともいえる豪華なプログラムを用意してくれた。ニューヨーク・フィルの真の実力が分かる曲目ばかりなのでメチャメチャ楽しみだ。今日の公演は大物の公演と言うこともあるが、コンサートホールは超満員。空席は数えるほどしかなかった。

オープニングはマイスタージンガー。最初から実力全開。京都コンサートホールをここまで響かせたのは聴いたことがない。残響がはっきりと3秒以上残る。京響を5つくらい合わせたパワーか。曲の方は正統的なテンポで演奏が進む。言うまでもないが、弦楽器・管楽器ともに懐の深く、充実した響きがホール中にこだまする。何と言っても圧巻は金管だろう。ホールを突き抜けといわんばかりの鋼鉄の固まりのような芯の太い音が飛んでくるのだ。そうCDで聴く同じ音が今ここで聴くことができているのだ。最も崇拝するバーンスタインが指揮台の上で飛び跳ねている姿がよみがえるような感覚に陥った。

タンホイザーも然り。私がクラシックの世界に足を踏み入れるきっかけになった曲だけに思い入れも大きい。だが、マズアはかなり速いテンポでどんどんと進めていく。それだけが残念だったが、ホルンの語りのうまさ、トロンボーンの勇ましさ、弦楽器のなまめかしさといったらもう言葉にはならない。もう少しドラマチックに演奏してくれたら最高だった。

前半だけでもかなりお腹いっぱいなのだが、後半はブルックナーの大作「ワーグナー」。なぜだか男性陣は全員上着を脱いでカッターシャツでステージに登場(金管の人たちは舞台上で脱いでいた)。これもアメリカらしさ?! ブルックナーだから金管の大活躍は言うまでもあるまい。特にタンホイザーに引き続きマイヤーのホルンの活躍ぶりといったら素晴らしい。相撲取りのような巨漢から生まれるそのホール全体を包み込む優しいホルンの音色に観客は魅了されっぱなし。第2楽章では弦楽器がこの上もない美しさを表現。全体的にニューヨーク・フィルの金属的な堅さというものはあるのだが、それを補ってあまりある上級のテクニック。ピッチカートまで「うまい!」と言わせるくらいだから。終楽章のフィナーレに近づくにつれ金管のパワーがますます増大していく。さらに曲の高揚感がすさまじくなり体が硬直状態に・・・ この感覚はベルリン・フィル以来だ。感きわまって涙が出そうになった。最後の1音が壮大に鳴り終わると、会場からは地響きにも似た割れんばかりの拍手と「ブラボー」の嵐。京都コンサートホールがこれほどまでにわき上がったのは少なくとも覚えがない。ニューヨーク・フィルの信者のパワーなのか、演奏が素晴らしかったからなのか。おそらくどちらも当てはまるだろうが。

通常ならあり得ないのだが、何とアンコールが演奏された。

  バーンスタイン「ウェストサイト・ストーリー」から「アメリカ」

金管のみのアンサンブルで有無を言わせずアメリカのパワーを余さずに披露してくれた。演奏は指揮なしで、マズアは第2ヴァイオリンの後ろの舞台に腰をかけて聴いていた。ブルックナーのあとにアンコールするなんぞもってのほかなんだが、この演奏もすごかった・・・ 昔、バーンスタインがマーラーのあとにマーチを演奏したことがあると聞いたが、これがニューヨーク・フィルの良いところなんだろうなぁ。ちなみにホルンのマイヤーが相撲取りのまねでシコをふんで会場を沸かせていた。恐るべしアメリカン・ショウシップ!

終演後いつものように楽屋口で団員を迎え、コンサートマスターのディクトロウとホルンのマイヤーにサインをもらった。さらにロンドン・フィルの時はもらえなかったマズアにもサインをもらった。今日はW杯で韓国もベスト4入りを決めたし、素晴らしい演奏も聴けたし、稀にみる有意義な日だった。

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