なんという観客の少なさだ。5割程度しかいなかったのではないだろうか? ホールに到着したとき、ロビーがあまりにも静まり返っていたので嫌な予感がしていた。開演直前なんてホールのメンテ日かと思ったほど静かでした。ベートーヴェン演奏に定評のある一流のピアニストだし、価格もリーズナブルなのになぜ? 大阪での公演は寂れる一方だ。
そんな悲しい現実はおいといて、とても落ち着きのある柔らかなベートーヴェンが繰り広げられた。オピッツの演奏は5年ほど前にN響の公演で聴いたことがあり、そのときの演奏のうまさに驚いた記憶があるため、今回のリサイタルに足を運んだというもの。ピアノ曲はあまり聴かないのだが、オピッツの均一で流れるようなタッチには誰もが心地よくならないはずはない。第15番「田園」はまさに田園風景が目に浮かぶのどかな演奏。副題を知らなかったので、後から知って「なるほど」と思いました。第3楽章の冒頭、音を直接撫でているような優しさには惚れ惚れした。第18番は聴いたことなかったので何とも言えないが、第1楽章はユニークなメロディで、爽快に駆け抜ける感覚があり気持ちが良かった。心地よさに意識も遠退き気味・・・
後半は華麗なテクニックが炸裂。第26番「告別」もあまり記憶にはない曲だったのだが、さすがに後期の作品だけあり曲の複雑さを感じた。終楽章は印象的で、音が多く面白いように流れていく。その滑らかさは最後の第21番「ワルトシュタイン」にもつながる。この曲は有名なのでよく耳にする。昨年の清水和音さんの演奏会での痛快な演奏を聴いたが、オピッツはテクニックに頼る感じではなく、あくまでも自然体。どの曲にも言えるが、一見して(一聴?)地味な感じがするくらい。そのために余計に曲の内面的なモノが見え隠れしているような気がする。この辺もベテランならではの味なんだろう。
あまり普段はピアノ曲を聴かないが、このような心地の良い演奏を聴くとピアノ曲をもっと聴いてみたくなる。しかし、それより以前にもっと人が入らんとアカンです。
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