20年ぶりに日本人としてショパン・コンクール4位入賞の快挙を遂げた関本さん。前回のコンクールの時には規定年齢に達していなかったために出場できず、満を持して望んだ大会だったという驚愕の実力の持ち主。今回は凱旋コンサートであり、PACオケとの競演ということもあり、当然のように会場はほぼ満席状態だった。
前半はピアノソロによるプログラム。有名な曲ばかりなんだろうが、あまりピアノ曲を聴かないので、初めて聞くといっても良い曲ばかり(「スケルツォ第2番」は唯一知っていた)。そんな状態であっても、関本さんは並みのピアニストとは違うことが明らかに分かった。最近の若手奏者は技術にモノを言わせてグイグイ弾いていく人が多い印象がある。そういう演奏は聴き応えはあるものの、後には残らない。それに引き換え、関本さんのピアノには表情があふれ、ピアノが語っているようだった。もちろん技術的にも完璧といえるほどレベルが高い。「ワルツ」の演奏で、それが顕著に分かった。聴いていて楽しい演奏というのは、やっぱり並の実力ではないということだろう。前半の最大の見せ場は「スケルツォ」。まさに圧巻で、ピアニッシモからフォルテッシモまで非常に幅の広いスケールで展開していた。結構前半だけで満腹状態でした・・・
後半はPACオケとの競演が楽しみの一つ。昨年のオープニングシリーズ以来久々にPACオケを聴くので、この数ヶ月の間にどれほどの成長が見られたか楽しみだ。とはいっても、コンチェルトなので小編成なうえ、大物奏者は参加していない。指揮者も初めて名前を聞く岩村さんという方。さて、演奏の方はというと、冒頭から非常にゆっくりしたテンポで少しだらけ気味な印象。おまけにオケのバランスも今ひとつ良くない。特に金管が場違いな響きを出しており、期待したPACオケの響きにはなっていなかった。そうなると興味は関本さんのピアノに集中。前半のピアノソロほどの自由度は見られなかったが、文句のない演奏でした。指揮者の解釈が好きではなかったので存分に楽しむまでは至らなかったけど。そんな鬱憤を晴らしてくれたのがアンコールだった。「去年はショパンばかり弾いていたので飽きた」とのことでバッハを選んだところが憎い。
J.S.バッハ フランス組曲第6番から4曲ほど
ショパン ポロネーズ第6番「英雄」
英雄ポロネーズは少し荒い作りだったものの、テクニックとダイナミクスでかなり楽しませてもらった。ありふれたピアニストではなく、異彩を放つ演奏家になっていくような気がした演奏会でした。
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