今回は内容的にもパワープログラム。まず最初は六車さんによる歌曲で始まった。昨年、六車さんを聴いたときはちょうど出産前だったので実力は発揮されていなかった。今回はその澄み切った伸びのある歌声に聴き入った。曲名は覚えてないが、山田耕筰の「中国地方の子守歌」他3曲。
さて、リストのピアノ協奏曲。この曲はオケのスピード感を楽しみにしていた。しかし、オケの立ち上がりが重くて鈍い。もっと「キレ」が欲しかった。ピアノの南さんはガンガン弾くタイプでリストには合っていたと思う。
2曲目はラフマニノフ。少し速くて、癖のある出だし。オケの方はなかなかの熱演で、この聴き慣れた曲を楽しませてくれた。コバケンはロシア音楽を知り尽くしているという事か。残念なことにピアノはイマイチで、体力切れか終楽章では音がオケに埋もれていた。音抜けも多かったし。それだけ難曲ということか?
メインはまたまたマーラー「巨人」。入院していてコンサートを2つ飛ばしてしまったので2回連続の巨人となった。先日の大フィルと今日のシンフォニカーの聴き比べという意味では興味深い。
第1楽章前半は音楽の流れと各楽器の表情が一致せず、ほとんど有機的な繋がりに乏しかった。トランペットのバンダもなかった(良くあることだが)。自信のないところは、もとい、弱いところはとことん弱く、鳴らすときは目いっぱい鳴らす。非常にデュナーミクの大きな演奏になっていたが、ちょっとオケが重く、立ち上がりが鈍かった。しかし今回も見モノはいつものティンパニストであった。本当に気が狂ったのかと思うくらいの激打! 第1楽章最後なんかはまさに最後の審判でも告げるがごとく厳しい打撃で緊張感が走った。
第2楽章は速めのテンポで、軽快というよりはむしろ、軍隊行進曲のような重厚さが感じられた。非常に泥臭い印象。憎いほどの「ため」があり楽しい作りだった。途中、チェロの首席が弦を切ってしまうアクシデントもあったが、隣のチェロととっ替えて見事に乗り切った。
第3楽章はテンポが速く、絶妙のティンパニボリュームで始まった。大フィルとは違い、ちゃんとコントラバスのソロ(大フィルはコントラバス奏者全員で弾いていた)。しかしなんとひ弱な・・・
圧巻は終楽章。冒頭の音量・バランス・テンポ、申し分なかった。今日のシンフォニカーは燃えまくっていた。音を外そうが、音を抜かそうが、そういうのは問題ではなかった。最後の部分ではホルンが立ち上がらなかったので「おかしいな」と思っていたところ、その直後に金管が一斉に立ち上がった。あまりの出来事に演奏中なのに「おおっ!」と叫んでしまった。そして曲が終わると同時にスタンディングオベーション!! これほど熱狂的になったのは久しぶり。「炎のコバケン」、その神髄を見た。
最後にコバケンのピアノでみんなで「ふるさと」を合唱。後ろの席から上手い歌声が聴こえるので振り向いたところ、ソプラノの六車さんが座っていた! 今日は非常に思い出深い演奏会になった。
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