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コンサート名・公演名

2004年7月9日 東京フィルハーモニー交響楽団
(京都コンサートホール)

演奏曲目および評価

ワーグナー  楽劇「トリスタンとイゾルデ」より前奏曲と愛の死
フィトキン  サーキット〜2台のピアノと管弦楽のための
R.シュトラウス  交響詩「英雄の生涯」



演奏者(指揮者・ソリスト)

ピアノデュオ: キャサリン・ストット&小川典子
指揮: チョン・ミョンフン

感想・短評

東京を代表するオケである東京フィルをチョン・ミョンフンの指揮で聴けるということだから期待しない人はいない。おまけに大曲の演奏ときた。

しかし、会場に足を踏み入れた途端にがく然とした。コンサートに足を運ぶのは200回を数えるが、記憶をたどってみても、史上最低の観客数だったのだ。おそらく5割を切っていたのではないだろうか? 正面の1階席は5割に満たず、正面の3階席に至っては34人しかいなかったのだ。京響の演奏会でもここまで少ないことはあり得ない。ましてや日本を代表する東京フィルがチョン・ミョンフンとソリスト2人を引き連れてきているのである。信じられない光景のまま演奏会は開始した。

指揮者・団員の士気に影響しないか不安だったが、さすがそこは百戦錬磨のオケだ。ミョンフン氏が指揮棒をあげた途端にワーグナーの世界に没頭していった。とても落ち着いたテンポで表情を深めていく。さすがに競争の激しい東京の中で最も歴史のあるオケである。ダイナミックな中にも端正な演奏を聴かせてくれていた。

2曲目は日本初演となる現代曲。現代の作曲家であり、基本構造はミニマル音楽で、それぞれのパートのかけ合いが分かりやすいために聴きやすいものだった。東京フィルは現代曲においても素晴らしい順応力を魅せる。均整がとれているがゆえに表現できるリズム。タイミングが一切ズレることない完璧な演奏。ピアノの2人も凄まじく、20分の曲中、絶えず超絶的な技巧でピアノを打ち鳴らしていた。まるでパーカッションのように。クライマックスではまっすぐに突き進む雪崩のようだった。会場には作曲者も来ており、盛大な拍手が浴びさられていた。

さて、最後は大編成オケによる「英雄の生涯」。この曲はなぜか演奏会で耳にすることが多い。それだけにオケの実力を知るには最適な曲でもある。東京のオケでは昨年に新日本フィルで名演を聴いている。その演奏との比較という意味でも期待大だ。演奏は昨年のウィーン・フィルを思わせる快速的な出だし。金管などは少し粗削りな部分もあったが、それもミョンフン氏の推進力を表す一面でもあった。やはり圧巻は「英雄の戦い」の部分。凄まじいほどの大音響にもかかわらず、ヴァイオリンを始め各パートの輪郭がはっきりと聴き取れたのはスゴイ。このあたりは関西のオケにはない底力の違いか。コンサートマスターの荒井英次氏のソロも見逃せない。昨年の新日本フィルで聴いた崔氏の方が音色は美しかったように思われるが、気合いの演奏という意味で荒井氏の勝ち。ちなみに荒井氏は7月4日に皇太子(ヴィオラ)、チョン・ミョンフン(ピアノ)、ミッシャ・マイスキー(チェロ)とともにモーツァルトのピアノ四重奏曲第1番を演奏したことでニュースにもなっていた、ちょっと話題の人。

そして、冒頭とは対照的に雄大なまでのフィナーレ。演奏が終わっても5秒以上は物音一つなかった。その後、観客が少なかったことを忘れさせるほどのブラボーの嵐(ひょっとしたらサクラかも知れんが)。京都コンサートホールを豪壮に響かせてくれた名演であったのは間違いない。また一つ「英雄の生涯」の名演奏に触れることができた。

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