前回のコンサートは音響の悪いフェスティバルホールだったので、今回はこのオケの実力を測る上では持って来いだ。おまけにオール・ベートーヴェン・プロなので期待十分。会場は満員御礼で、補助席も用意されるほどの活気。さすがにミニ・ウィーン・フィルへの期待は大きい。
最初は例によって「イントラーダ」で始まった。やはりこの曲に対する思いはほとんどないのだろう。全員立って演奏することも影響してか、前回同様にバラバラな感じ。続く「エグモント」とは大きな違いがあった。さすがに弦楽器の働きは良い。ただ、指揮者を置かないためか、平坦な演奏になり、楽しみが意外と少なかった。人数が少ないためもあろうが、古楽器演奏のように音を短く、シャープに奏するウィーン・フィルらしいスタイルが心地よかった。
少し注目していたのがピアノ協奏曲。仲道さんが弾き振りをするのかどうかに期待していた。結果は残念ながら弾き振りではなく、「弾き振りをしている素振り」という中途半端なもの。おまけに、あまり仲道さんはベートーヴェンに向いていない感じがした。力強さと押しが弱いので、オケを引っ張っていくような推進力が生まれてこないのだ。今ひとつ流れも良くなかったし。しかし、仲道さんらしさが出たのは第2楽章ではなかろうか? 眠たくなる楽章なのだが、緊張感と安らぎを持って聴かせてくれた気がする。もちろんオケの働きが良かったのも理由の一つだろう。注文をつけるとすれば、オケは小規模なんだからピアノに気を使わずに自由に弾いて欲しかったこと。
オケの本来の実力が発揮されるのは後半だった。「英雄」は演奏機会も多いのでそれほど期待していなかっただけに、奇襲攻撃にあった感じだ。とても30人のオケで演奏しているとは言えない迫力!(弦楽器の音が耳につくくらいに金属的な音だったのは気になったが。)性格の異なる第2・3楽章の出来が特に素晴らしかった。静寂と緊張感、そして襲いかかるような激しい攻撃。指揮者なしで自発的に各々が実力を出すとこのような演奏になるのだろうか? まさにウィーン・フィルを聴いている感覚に陥った。
しかししかし、もっとスゴイ演奏はアンコールに用意されていた。J.シュトラウスII 喜歌劇「こうもり」序曲。ホールが一転してウィーンのニューイヤーコンサートになってしまったのだ。これがウィーン・フィルの真骨頂。筆舌に尽くしがたいというか、鳥肌が立って、体が震えるほどの名演だった。私が好きではないシュトラウスをここまで聴かせてくれたのだから。この1曲だけで今日の演奏会にきた甲斐があったと思うくらい大満足の演奏だった。
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