正月気分に浸ったまま、今年最初のコンサートに突入。会場は関西財界の大物が多数招待されており、いつもとは違った雰囲気。建築家の安藤忠雄氏の姿も見ることができた。正月だというのに会場はほぼ満席に近かった。オケの人気なのか、財界のつきあいで来ているだけなのか・・・聞いて見れば分かることだろう。。。
ちなみにこのオーケストラは、作曲家の三枝成彰氏と指揮者の大友直人氏が、十数年前から始めた特設オーケストラである。それも全国のオーケストラのコンサートマスターや、各首席奏者で構成されているスペシャルオケなのだ。寄せ集めのオケは数々の例があるが、成功しているのはサイトウ・キネンくらいである。このオケの活動も12回目を迎えるということもあり、その実力がどのくらいのものなのかに注目してみた。
1曲目からいきなり大曲で始まる。さすがに粒のそろった演奏。何より驚いたのは、1stヴァイオリンのボウイングが美しいまでにそろっていたこと。コンサートマスター級の奏者は見せることも演奏のうちだからだろうか? ただ、演奏の方は申し分なく上手いものの、全体的に均一すぎて、個性がもう一つ感じられなかった。第2楽章は遅めのテンポで、しっかりと歌い上げていたので最も完成度が高かったように感じた。第4楽章になって、ようやく(?)各々が自発的に奏でていたようで、素晴らしくエキサイティングであった。曲を通して、大友氏らしくオーソドックスに美しくまとめ上げた、そんな演奏だった。
後半は小品のオンパレード。まずはベルリオーズ。一気に楽団編成が巨大になり、音量的にも倍になった感覚。打楽器や木管が大活躍する曲なので華やかさが炸裂。短い曲の中に、この大曲の片鱗を見せてくれ、曲の魅力を再度感じることができた。
エグモントは、昨年末に京響の演奏会で聴いたものの方が重量感があって良かったかな(京響に重量感があるというのは珍しいが・・・)。今回の演奏はありふれたものだったので、もう少し劇性を出してみても面白かったのではないだろうか?
今回一番のできだったのは、マイスタージンガー。今まで何度か演奏会でも聴いてきたし、録音などもいろいろ聴いているが、今回ほど堂々としたマイスタージンガーはあまり聴いたことがなかった。金管の安定感に弦楽器の層の厚さが加わり、これ以上ないほどの魅力を呈していた。ワーグナー演奏の見本を見せてくれた感じだ。迫力も満点でした。
実は、この演奏会の目玉は本編ではなくて、おまけ(アンコール)にあるのではないだろうか? というのも、今回で12年目の演奏会となるにもかかわらず、毎回アンコールで「六甲おろし」を演奏していたらしいのだ。ようやく今回は阪神タイガースが優勝を遂げてくれたので、満を持してスペシャルバージョンにての演奏と相成ったのでありました。2階席の客席に設けられたファンファーレ隊の演奏で幕開け。会場はベルリオーズ的な立体ステレオ空間へと変化した。さすがにスペシャルバージョンだけあり豪華絢爛。優勝してないときにこの演奏をすると恥ずかしくなるくらいのものだった。大迫力の六甲おろしに会場のボルテージは最高潮に。熱狂的な拍手に、もう1曲、威風堂々を演奏してくれたが、こちらは勢いに任せた演奏となっていて、完成度は一番低かったか・・・
古関裕而(大島ミチル編曲) 六甲おろし special victory version 2004
エルガー 組曲「威風堂々」より第1番
オケの実力の高さは疑いようのないものだった、六甲おろしを武器に今後とも躍進してもらいたい特設オケだと思う。
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