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コンサート名・公演名

2003年11月10日 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(滋賀県立芸術劇場 びわ湖ホール)

演奏曲目および評価

ベートーヴェン  交響曲第6番「田園」
R.シュトラウス  交響詩「英雄の生涯」*


演奏者(指揮者・ソリスト)

ヴァイオリン・ソロ: ライナー・ホーネック*
指揮: クリスティアン・ティーレマン

感想・短評

ついに来ましたウィーンフィル(以下WPh)。数々の著名なオケを聴きに足を運んでいるが、WPhはなんと初めてなのだ(リハーサルを聴いたことはある)。今年の演奏会の集大成にふさわしい素晴らしいプログラム。会場は当然のことながら超満員で熱気に包まれていた。本日の指揮はティーレマン。最近にわかに注目度が上がってきているだけに要チェックなのだ。

前半はWPh十八番の「田園」。ティーレマンは意外と正統的で、曲に装飾を施さないシンプルな演奏を披露した。この曲では木管が大活躍するが、残念ながら今ひとつの出来だった。特にオーボエの音量が少なくバランスに欠けていた。クラリネットのシュミードル、フルートのシュルツなどの大物の働きも期待したほどではなかった。しかしそこはWPh。独特の弦合奏が曲をしっかりと形作っていた。WPhの弦は何とも言えない魅力がある。音色には伝統を感じさせる深み(ある意味、古めかしさ)があり、渋いほどの張りと艶があった。これは他のオケではなかなか聴くことは出来ない部分だろう。ティーレマンもWPhの魅力を最大限引き出して、独自のベートーヴェン像を描いて欲しかっただけに、少し不満の残る演奏だった。

後半は大注目のR.シュトラウス。WPh=R.シュトラウスといえば、数々の名演を世に送り出している最高のコンビだ。もちろん、この組み合わせを日本で聴けるとは何とも幸せなこと。R.シュトラウス最大の名曲「英雄の生涯」をティーレマンはどのように料理するかに関心が集まる。

冒頭は疾走するかのようにハイスピードで始まった。もっと堂々と構えた演奏を期待していただけに驚いたが、テンポは次第に落ち着いていく。しかし、WPhの弦の深みはスゴイ。全く底が見えないほど深いのだ。曲が進むにつれ、WPhの本気度がどんどん増していく。もう誰にも止められない。コンマスのホーネックも堂々とした主役を演じ、金管もWPhらしい響きで聴衆を圧倒。「英雄の戦場」のシーンなどは燃え盛るWPhにただただ魂を奪われるばかりだった。空間の大きなびわ湖ホールの4階席後方でも、目の前で熱演するWPhに圧倒されっぱなしだった。普通規模のコンサートホールだと腰を抜かしていたかも知れない。感動的な「英雄の引退と完成」が終わった後、10秒ほどの静寂が会場を支配した。そのあと、大喝采でホールが揺れたことは言うまでもない。熱狂的な歓声に応え、アンコールも演奏してくれた。

 R.シュトラウス 歌劇「カプリッチョ」より「月の光の音楽」

演奏後、あとになるほど感動が押し寄せる。今日のR.シュトラウスの演奏は、そんな記憶に残る名演だった。しかし、奥が深くて1回聴いただけでは把握しきれないWPh。また次回も行ってみないと良さは分からないかも。

今回の演奏を聴いて、分かったことがある。今まで数多くのオケを聴き、良い演奏にも数々出くわした。しかし、本当に素晴らしい演奏とは外見ではなく、曲の本質をどれだけ突いているかと言うこと(当たり前?)。この基本的なことをしばらく忘れていたような気がする。それを見事に魅せてくれたWPhはやはりただの「うまい」オケではないということだ。

終演後は例によって楽屋口に。ティーレマンはすでに別出口?から出ていたためにサインはもらえなかったが、何人かの奏者にサインをもらうことが出来た。

 コンサートマスター:ライナー・ホーネック
 1stヴァイオリン:クレメンス・ヘルスベルク(楽団長)
 2ndヴァイオリン(Top):ペーター・ヴェヒター
 オーボエ:マーティン・ガブリエル
 トランペット:ハンス・ペーター・シュー

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