今年のウィーン・フィルの日本公演はドタバタ劇となった。そもそも今年のシェフは小澤征爾だったが、健康面から長らく休養しているために代役が立てられた。それが、エサ・ペッカ・サロネンとアンドリス・ネルソンスの2人だ。サロネンはウィーン・フィルとの関係も浅いし、ネルソンスはまだまだ期待の新人のため、ある意味大胆な代役だった。しかし、直前になりサロネンが意味不明の降板。ウワサによるとオケとの不仲や大物指揮者を立てるためとも言われていたが真相は・・・。結局、日本公演は、ジョルジュ・プレートル、フランツ・ウェルザー=メスト、アンドリス・ネルソンスの3人体制で行なわれることになった。併せてプログラムも大きく変更となったので、払い戻しなども殺到したようだ。
今日の公演はもともとサロネン指揮の公演だった。それがメストへの変更だ。メストはクリーブランド管弦楽団の公演に合わせての来日だったので、実質唯一の公演となった。曲目もブルックナーの交響曲第6番から第9番への変更。大幅とはいえないが微妙な変更だ。ただ、今シーズンからウィーン国立歌劇場の音楽監督に就任したメストということもあり、ウィーン・フィルとの相性は悪くないはず。払い戻しする人も多い中、私は期待を持って聴きに行った。ウワサどおりS席A席あたりに空席が目立つ。値段設定が高すぎるので今回は仕方ないだろう。
さて、演奏の方は個人的にはとても満足のいくものだった。なにしろウィーン・フィルの個性的な音色を存分に味わうことができたからだ。最初のワーグナーは何か今年の因縁のようなものを感じるプログラム。ウィーン国立歌劇場で聴いたのもワーグナーだったし、「トリスタンとイゾルデ」は先月観たばっかりだ。感傷に浸りながらウィーン流の響きを楽しめたと思う。最上の演奏だとは言えないかもしれないけど。
響きを味わう上ではブルックナーに勝る曲はないだろう。ウィンナーホルンをはじめとして、まぶしくも高貴な音の連続に酔いしれました。メストはテンポが速く、急ぎ気味だったし、縦の線が乱れるような箇所も多かった。ブルックナーにはあまりないような急なテンポ変化もあった。それを含めても、ウィーン・フィル独特のブルックナーの響きは失ってなかった。第1楽章の最初のトゥッティにはシビレタし、第2楽章の弦楽器の勇ましさも他を寄せ付けない力強さだった。残念だったのは第3楽章最後のホルンが不安定なまま終わったことか。あそこはバッチリ決めて欲しかった。。。
終演後に演奏に対して苦言を呈していた観客もチラホラいたが、私はそこまでダメ出しするほどの出来の悪さだったとは思わない。100点ではないにしても、ウィーン・フィルの魅力を引き出していたのは確かだし、代役とはいえ、ごまかしの効かない曲で挑んだメストも立派だったと思う。せっかく高いお金出してきているんだから、音楽は楽しみましょう。
ウィーン・フィルを実際に耳にするのは今回で7回目。なぜか毎回違うホールで聴いているので響きの違いも異なる(京都コンサートホール、びわ湖ホール、兵庫県立芸術文化センター、ミューザ川崎シンフォニーホール、ウィーン楽友協会大ホール、ウィーン国立歌劇場、サントリーホール)。ウィーンで聴いたものを除くと、サントリーホールの響きは素晴らしく上質だった。さすがに日本を代表する名ホールといえる。一番安い席だったのにねぇ。堪能できました。
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