現代オペラだというのと、ドロドロなネタなので、集客は悪いだろうと思っていたが、比較的よく入っていた(笑)。3階正面席はスカスカでしたけど。やっぱり沼尻さんに対する期待が大きいのだろう。
舞台上は、回り舞台の敷居も解放して広々とした空間が広がっていた。廃墟のような古びた住居の床と扉が主な舞台セット。指揮者を映すモニターや小道具なども倉庫であるように置いたままにしていて、雑多とした雰囲気がよく合っていたと思う。簡素なセットとは別に、歌手陣はみな充実した歌唱力があって実に聴き応えがあった。特に主人公のルルはハマリ役で、極端な高音域も難なく出せていたのが素晴らしかった。沼尻さん率いる大阪センチュリーは、さすが現代曲に長けているということを感じさせる演奏。
現代舞台ならではの意味深な比喩表現を用いたプロローグはユニークだった。第1場の医事顧問官は唐突的に亡くなったが、第2場の画家が自殺するシーンの緊張感はスゴくて鳥肌が立ちっぱなしだった。ホラー映画がサスペンスか。
第1幕第3場は劇場が舞台ということで、舞台奥には小編成のオーケストラが設置されていた。ここでの見どころは、ルルに言いくるめられ、婚約破棄を余儀なくされる彼女の魔性さだろう。ルルの知的さを感じることができ、うまく演技されていたと思います。なるほど、彼女の世界に全員振り回されるわけだ。
第2幕は1場形式だが、物語は劇的に移ろっていく。完全に気を狂わしたシェーン博士がルルにピストルで撃たれるシーンはうまい盛り上げ方だった。その後の演出がまたユニークで、突然舞台天井からスクリーンが降りてきて、ルルの逮捕、裁判、そしてゲシュヴィッツ令嬢の献身的な脱走計画の経緯がイメージ映像と字幕で映し出された。オペラというより演劇に近いですね。そして、国境越えの計画シーンへと展開。複雑な人物描画と、異常なまでの精神状態が渦巻いているため、なかなか理解が追い付かない。それでも、息もつかせぬ展開が観る者をひきつけ、最後の切り裂きジャックが登場するシーンなどは恐怖におびえてしまった。
昨年の「サロメ」は奇抜な演出のために、本来の恐ろしさを感じられなかったが、今回の「ルル」はストレートな演出で大いに楽しむことができた。しかし、ルルとサロメがかぶってしまうなぁ。
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