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2009年10月4日 沼尻竜典オペラセレクション 歌劇「ルル」
(滋賀県立芸術劇場 びわ湖ホール 大ホール)

演奏曲目および評価

ベルク/歌劇「ルル」3幕完成版(ドイツ語上演・日本語字幕付)

演奏者(指揮者・ソリスト)

ルル:飯田みち代
ゲシュヴィッツ伯爵令嬢:小山由美
アルヴァ:高橋淳
劇場の衣裳係・ギムナジウムの学生・ボーイ:加納悦子
医事顧問官・銀行家・教授:片桐直樹
画家・黒人:経種廉彦
シェーン博士・切り裂きジャック:黒田博
シゴルヒ:大澤建
猛獣使い・力業師:志村文彦
公爵・従僕:清水徹太郎
侯爵・売春斡旋業者:二塚直紀
劇場支配人:松森治
15歳の少女:中嶋康子
少女の母:与田朝子
女流工芸家:江藤美保
新聞記者:相沢創
召使:安田旺司

管弦楽:大阪センチュリー交響楽団
指揮:沼尻竜典
演出・装置:佐藤信
照明:齋藤茂男
衣裳:岸井克己
音響:小野隆浩(財団法人びわ湖ホール)
舞台監督:牧野優(財団法人びわ湖ホール)

感想・短評

現代オペラだというのと、ドロドロなネタなので、集客は悪いだろうと思っていたが、比較的よく入っていた(笑)。3階正面席はスカスカでしたけど。やっぱり沼尻さんに対する期待が大きいのだろう。

舞台上は、回り舞台の敷居も解放して広々とした空間が広がっていた。廃墟のような古びた住居の床と扉が主な舞台セット。指揮者を映すモニターや小道具なども倉庫であるように置いたままにしていて、雑多とした雰囲気がよく合っていたと思う。簡素なセットとは別に、歌手陣はみな充実した歌唱力があって実に聴き応えがあった。特に主人公のルルはハマリ役で、極端な高音域も難なく出せていたのが素晴らしかった。沼尻さん率いる大阪センチュリーは、さすが現代曲に長けているということを感じさせる演奏。

現代舞台ならではの意味深な比喩表現を用いたプロローグはユニークだった。第1場の医事顧問官は唐突的に亡くなったが、第2場の画家が自殺するシーンの緊張感はスゴくて鳥肌が立ちっぱなしだった。ホラー映画がサスペンスか。

第1幕第3場は劇場が舞台ということで、舞台奥には小編成のオーケストラが設置されていた。ここでの見どころは、ルルに言いくるめられ、婚約破棄を余儀なくされる彼女の魔性さだろう。ルルの知的さを感じることができ、うまく演技されていたと思います。なるほど、彼女の世界に全員振り回されるわけだ。

第2幕は1場形式だが、物語は劇的に移ろっていく。完全に気を狂わしたシェーン博士がルルにピストルで撃たれるシーンはうまい盛り上げ方だった。その後の演出がまたユニークで、突然舞台天井からスクリーンが降りてきて、ルルの逮捕、裁判、そしてゲシュヴィッツ令嬢の献身的な脱走計画の経緯がイメージ映像と字幕で映し出された。オペラというより演劇に近いですね。そして、国境越えの計画シーンへと展開。複雑な人物描画と、異常なまでの精神状態が渦巻いているため、なかなか理解が追い付かない。それでも、息もつかせぬ展開が観る者をひきつけ、最後の切り裂きジャックが登場するシーンなどは恐怖におびえてしまった。

昨年の「サロメ」は奇抜な演出のために、本来の恐ろしさを感じられなかったが、今回の「ルル」はストレートな演出で大いに楽しむことができた。しかし、ルルとサロメがかぶってしまうなぁ。

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