当日は昼まで広島にいたため、急いで大阪へ戻るというハードスケジュール。諏訪内さんを聴くのは今回で2度目だ(98年の大フィル定期)。諏訪内さんの出番は前半なので楽屋入りするのを待っていたが、残念ながら会うことはできなかった。もう入っていたのか、開演後入ったのか・・・ 諏訪内さんが登場するためか、はたまた来日オケだからなのか、客の入りはほぼ満席。
話はまずヴァイオリンから。諏訪内さんの衣装は今週のN響の演奏会と同様の真っ赤なコスチュームで登場。一昨年大フィルでドヴォルザークのヴァイオリン協奏曲を聴いたときは、その音量の豊かさとパワフルな演奏に驚いた。今回はシンフォニーホールなので良くきこえるだろうと思ったが、意外に音をセーブしていた。というのも、今回の曲目はバルトークのヴァイオリン協奏曲にサラサーテのツィゴイネルワイゼンなので、そんなにパワー曲ではない。その繊細で、いかにも女性的で伸びやかな音色に聴き入ってしまうわけだが、オケのパワーはものすごかった。ソリストをほとんど気遣わず鳴らすところは鳴らし、静かなところはトコトン。そのメリハリが今回の演奏会の特徴だった。1つだけ残念でもあり、見応えもあったハプニングがあったことを紹介しておく。それはツィゴイネルワイゼンの終楽章。数小節弾いたところで諏訪内さんの弦が切れた! すぐさまコンマスのヴァイオリンと交換。フィッシャーは何もなかったように楽章の最初から演奏をし直す連携のうまさ。このハプニングも影響して聴衆は大絶賛。ブラボーの嵐。ただ、途中から楽器が変わってしまったので響きが異なってしまった上、弾きづらそうだったので決して最上の演奏とはならなかったのが心残り。
後半は本場のオケコンとあり、気合い十分で望んだ。しかし、冒頭から腰を抜かす(笑)。非常に遅いのだ! 全体的に遅いところはトコトン遅く、速いところはトコトン速く、静かなところはトコトン静かに、うるさいところはトコトンうるさく・・・デュナーミクとテンポの2つの要素のレンジが非常に広いために3次元的に音が浮かび上がってくる。一言でいえば「キワモノ」の演奏だが、個性的な演奏はLiveで聴くことの喜び。原曲が分からなくなる(笑)ところもあったが、めったに聴けないものを聴かせてもらったので満足。
アンコールにはコダーイの「ハーリ・ヤーノシュ」より「老婦人」、ブラームスのハンガリー舞曲第6番。目玉はハンガリー舞曲での中間部に入ったツィンバロンのカデンツァ。超絶技巧を駆使して大熱演! これには聴衆も大熱狂。この曲だけでも聴きに来た甲斐があったといえるくらい。
全体的に、オケは極上の美しさいうわけではないが、エネルギッシュで個性的な演奏には今後も目を離せない。
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