初演時のスコア |
昨年から何度かこくさいホールでオペラ公演を何度か見ているが、安物ばかりだからか、あまり良い演奏を聴けていない。今回はお得な席が設定されていたのと、配役が良いので行くことにした。しかし、内容はメジャータイトルではなく、三枝氏による新作オペラ。はっきり言って内容についてはほとんど期待していなかった。チケットの売れ行きも最初のころはイマイチだったようだが、当日はそれなりに観客が入っていた。1000円という激安席にもかかわらず視界は良好(ちなみに1列前は5000円、2列前は8000円という値段設定だった!)。SS席が20000円もするのでお得感が良く分かっていただけるかと(^^;
今回の見所は結構多い。三枝氏の音楽、島田氏の脚本、アバド氏の演出、ソリスト・オケなど、知らない曲とはいえ、魅了くたくさんある。幕が上がると、荒廃した舞台が目に飛び込む。演出のダニエレ・アバドは、あのクラウディオ・アバドの息子。いま話題の演出者だそうだ。CGや実写などの映像も活用していて、セットを大きく変更せず、さまざまな場面を表現していた。この辺は現代舞台の特徴か。言語は日本語による上演だが、悲しいことに字幕を見ないとなかなか聞き取れない。おまけに島田氏の脚本は高尚で内容的に結構ムズカシイ。必死に字幕を追っかける。最初に登場した「蝶々婦人」や詩人ともにうまかった。特に白塗りの顔で何度も登場する詩人はセリフこそ難しいものの、ものすごい迫力と演技力があった。ほんと素晴らしかったです。
第2幕に入ってようやく、Jr.バタフライとナオミの主人公2人が顔をそろえる。佐藤さん、佐野さんともに歌唱力には定評があるため安心して聴けた。文句なくウマイ。京響も負けじと好サポート。ピットに入りきれず舞台の両袖にパーカッションを配置するなどの大きな布陣なので、迫力はかなりのもの。いつもの京響のキレも相まって、音楽だけでも十分に楽しめた。三枝さんの音楽は全編に渡って美しく、映画音楽のようにストーリーを邪魔することのない絶妙な出来栄えだったのが良かった。
感動はやはり第3幕。ストーリーは下記に画像で挙げておくが、最後の場面にて合唱団が華々しく登場する。このような公演での合唱団は素人の寄せ集めになる場合が多いのであまり期待していなかったが、これがかなり上手く、ものすごい声量による迫力。感動を一気に高めるには十分すぎる演出だった。客席では涙をぬぐう観客もちらほらだった。テーマは第2次世界大戦だが、震災からの復興と見事に融合したのも感動の大きな理由のひとつ。それまでのイマイチだった拍手が一転、最後に至って大喝采で幕が下りた。メジャータイトルも良いが、このような新しい作品や、これまであまり光が当たらなかった作品などの方が思わぬ出会いができて面白いのかもしれない。
【各幕のストーリー】 ※オーケストラスコアより
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