【短評】　「新星誕生」
　この日はピアノのチェ・ジニの演奏に魅せられっぱなし。柔らかなタッチからは、流れるようで情緒溢れる情景が浮かび上がる。まるで何かを悟ったかのような、堂々とした深みのある演奏だ。これから世界の舞台へと羽ばたいていく逸材だと思う。（一方、伴奏については平凡であった。）

　後半のラフマニノフは圧巻。私自信の大阪シンフォニカーの経験で、一番の出来。ザンデルリンクは実に雄弁で、美しく曲を仕上げた。いつも、力不足気味である弦楽陣が健闘し、数々の甘いメロディを華麗に奏でてくれた。そして、管・打楽器陣も重厚さを最後まで持続させ、緊張感ある引き締まった雰囲気を造り出した。今後とも、このような充実した演奏を期待したい。