実に3年ぶりとなるオーケストラ・アンサンブル金沢の演奏会。今回は特にギドン・クレーメルがソリストということもあり、すごく期待していた。しかし! 直前になってクレーメルが急病のために来日不可能になったという告知が・・・ 今までいろいろなコンサートに行っているが、これほどビッグな人が来れなくなったというのは初めて体験する。
しかし、困ったのはお客さんではない。オーケストラ・指揮者であったに違いない。来日が不能になったのは9/10ごろのこと。おまけにこの大阪公演の前には石川での公演と東京での公演が入っていたのだ。代役を捜すのに苦労したらしい(ズーカーマンやパールマンにも声をかけたとのこと)。しかし、あまりに急なだけでなく、プログラムに入っているアウアバッハの曲は世界初演となっているのだ。実質1日半でアウアバッハ、チャイコフスキー、ベートーヴェンの曲を弾きこなせなくてはならない。そこで立ち上がったのが、オーケストラ・アンサンブル金沢のコンサートマスターのマイケル・ダウス。彼は何と半日でこれらの曲をマスターしてしまったのだ! いくらプロの演奏家とはいえこれは大変なこと。そういう曰く付きの演奏会となった。
その問題のアウアバッハの「ゆううつな海のためのセレナード」。悲哀に満ちたチェロの音色とヴァイオリンの旋律が流れる中、バックでは一列に並んだオーケストラがまるで霧のように静かに不協和音を奏で続ける。その中に分け入るピアノの演奏・・・はっきり言ってよく分からなかった(笑)。緊張感があるのか、だらけていただけなのか。まさに「ゆううつ」になってしまうような曲だった。
それに引き替え、チャイコフスキーの方は「ゆううつ」というよりも軽く明るい感じがして、とても心地よかった。ダウスのヴァイオリンが優しい音色なのでこの曲にあっていたのかな?
今日のメインは三重協奏曲。ピアノ三重奏がオーケストラに入り込んでいるという感じの曲なので、いろんな楽しみ方ができる。チェロのスドラバとピアノのズラビスはなかなか刺激的な演奏をするようで、ダウスの女性的なヴァイオリンとは時折合っていない部分も見受けられた。とはいえ、急な代役とは思えないアンサンブルを醸し出していたのはさすがというべきか。
メインとは思っていなかったのだが、「運命」はなかなか気合いの入った演奏となった。小規模のオーケストラという特長を生かしたはつらつとした演奏で、この聴き慣れた曲を魅力的なものにしていた(実は生演奏で聴くのは初めて)。特に第2楽章は素晴らしく、岩城さんの雄大なテンポの取り方などは聴いていてとても安心できるものだった。また、終楽章の金管陣の充実も素晴らしく眩しいほどにきらめいていた。
アンコールでは岩城さんがトライアングルを担当してトルコ行進曲を演奏。運命のあとにはアンコールはいらなかったが、お茶目な演出に心が和んだ。今日は全曲弾ききったダウスに拍手を送りたくなる演奏会だった。
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