プログラム的には「何だかなぁ」と思いながらも、デュメイが登場するとあっては興味深い演奏会。案の定、土曜日ということもあり、珍しくほぼ満員状態の京都コンサートホール。やっぱりこれくらい入らないとねぇ。
さて、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲は、何度も感想で書いてきているが「嫌い」な曲の1つ。よりによって・・・という感じはするが、そういう曲に限って素晴らしい演奏にこれまで出会ってきている(^^; デュメイ氏のヴァイオリンは非常になめらかで、一聴すると平坦な印象を持った。しかし、曲が進むにつれ、その音楽の深さが見えてきた。背は高く、顔もおっかない感じはするのに、音楽そのものはとても純粋で透き通っている。それでいて穏やかで、包み込まれるような優しさ。そんな濁りのない音色に心奪われました。オケはあんまり印象に残ってないが、急遽出番になった小谷口さんのクラリネットは柔らかく、ヴァイオリンと良く絡んでいました。最後の楽章は超絶的な要素を含むも、目を見張るような流麗さで聴き応えバッチリでした。またしても嫌いな曲なのに良い演奏でした・・・
後半は大好きなマーラーにもかかわらず、さすがに第1番は聞き飽きてきている(何度目だろう?10回は超えてるはず)。しかし、意外にもマーラーの似合う京響では第1番を聴いていないのだ。大友さんの指揮の下、全国ツアーの前哨戦ともなる今日の演奏は少し期待を持って聴いた。
テンポは抑えめで、特に目立ったことをしない実にオーソドックスな演奏。普通であればそれは「退屈な演奏」となり睡魔がお誘いに来るはず。。。なのになぜか今日は演奏に釘付けだった。なぜなら、今回のマーラー演奏は個々のプレイヤー(特に出番の多い木管)をじっくり聴くことに注力していたからだ。ギスギスしていない、とても新鮮で健康的なマーラー演奏。決して、派手で明るいというわけではなく、どの楽器も朗々と歌っていて、確かに音楽が息づいていた感じがした。オーソドックスな故に個人の演奏を際だたせることになっていたのかも。今日の演奏は明らかに、オケの反応の良さに大友さんが逆に乗せられていた感じだった(第4楽章では普段見せないような形相で指揮していたくらい)。第1楽章は天国的で牧歌的な叙情さえ目に浮かぶくらい安心感があった。注目していたクラリネットもピカイチ。第1楽章が終わったあとで大友さんが親指を立てていたほど充実していた(難点を無理に付けるとすればバンダのトランペットが少しそろってなかったくらいかな?)。第2楽章も生き生きとして輝いており、大友さんもブラボーとつぶやいていた。第3楽章はコントラバスのソロが遅れ気味で危なかったものの、第4楽章も全く集中力が切れない抜群の緊張感で、かつてないほどバランスの良い快演だった。隣に座っていたおばちゃんも、曲が終わった直後に「すごーい!」って身を乗り出していました。
これで何の文句があろうか? 理想的なマーラー演奏であり、京響は世界のどんなオケにも負けないほどの名演を繰り広げたと思う。各プレイヤーの集中力と演奏技術の高さには脱帽です。。。あまりに充実感のある演奏に鳥肌が立ちっぱなしで、涙が出てきたくらいだった。中秋の名月が煌々と輝くなか、それに負けない美しい演奏を聴けて満足感でいっぱいでした。
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