待望の大野和士氏の登場とあって会場は定期とは思えないほど(失礼!)の満員状態。当日券売り場も長蛇の列でした。大野さんといえば、3年前に大フィルを振ったときにタダ者ではないことを思い知らされた指揮者だ。近年、評価がうなぎ登りなだけに、今シーズンの目玉公演といえよう。
冒頭、今週他界した若杉弘さんを偲んで、J.S.バッハのアリアが演奏された。若杉さんと京響の最後の公演は2007年のびわ湖公演とのこと。私もその公演が若杉さんを聴いた最後となった。京響らしい清らかな弦楽器の調べが、追悼に相応しいものだったと思う。拍手さえなければ・・・
さて、前半はラヴェルから。一番お気に入りの「ラ・ヴァルス」は実に高尚すぎてちょいと厳しかった。聴き慣れた曲なのについていくのがやっと。非常に起伏が激しくて、さすがの京響でも崩壊寸前の危うい演奏。しかし、こういう緊張感はいいですねぇ。下手にまとめようとしていないのが素晴らしい。トコトン大野流を貫き通すのが素晴らしい。
「マ・メール・ロワ」は期待が大きすぎだったせいもあるが、もう少しファンタジーな世界が欲しかった。クラリネットも少し重い感じだったのが残念なところ。まぁ、この純粋なおとぎ話をこね回すのもナンセンスなんですけどね。終曲のヴィオラが美しかったのが印象的だった。ただ、「ラ・ヴァルス」に比べればおとなしい指揮でした。
後半は飽き飽きの「革命」。しかし、そんな思いをホームランで場外にかっ飛ばされてしまった激演でした。何しろ劇的でスケールがデカイ! 指揮もアツくて、第4楽章なんかは、右手左手を目一杯グルグル回す激しさ。もちろん、見た目や派手さがスゴかったのではない。一番驚いたのは、「えっ、京響ってこんなに最弱音出せたっけ?!」というほどの、レンジの広さ。弱音が出せるオケって一流の証なんですが、それが引き出されたことに驚いた。弱音がスゴいということは、最強音もスゴいということ。第4楽章での頂点では仰け反った(汗)。意外だったのは第3楽章か。革命前夜の静けさだといつも思って聴いている楽章、弦楽器と木管楽器の美しさが決めてだが、不気味さや悲壮感というのではなく、少し諦めに近い憂鬱な感じに聞こえた。真意はどこに?!
特に素晴らしかったのは、第2楽章と第4楽章。第2楽章なんていつもは聞き流すくらいなのに、低弦の大充実に加えて、絶妙なテンポ設定。何も文句はないです。第4楽章は気でも狂ったのかと思うほどの荒れ狂う音の大洪水。金管と打楽器の独壇場でした。あまりにスゴすぎたのか、フライング拍手が多いこの曲で沈黙が数秒あったのも驚きだ。
かつてないほどの熱狂振りに、何度指揮者がステージに呼ばれたことか。京響史上最多か? 前評判も高く、大野信者も多く訪れていたので、まわりに惑わされず冷静に聴いていたつもりだったが、終わってみれば完全に術中にハマっていた。恐るべし大野和士、また京響への登場を期待したい。
【余談1】
いつものようにP席に座っていたのだが、来る人来る人座席がダブルブッキングを起こしていた。P4列目全てか? 結局5列目分がカブっていたようで、後から来た人は5列目に。こんなんあり?
【余談2】
「指揮者でこんなに変わるんか?!」「久々に京響聴きに来たが、いつもこんなにウマく演奏するなら毎回聴きに来るわ」という話があちこちから聞かれた。あのー、指揮者で変わるのは確かなんですが、いつも京響はウマいんですが。。。
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