まだ紅葉の季節に早いが、先週の台風が過ぎて随分と寒くなった。今年の冬は寒くなるのかもしれない。それに引き替え、京響の演奏会は随分とアツイものだった。プログラム的には「なぜ、オール・ワーグナーじゃないんだ?」という不満もあるが、後半だけでも京響のワーグナーが聴けるのはありがたい。特にリングと来ればなおさらだ。
そんな感じで、前半のベートーヴェンはあまり期待してなかった。おまけにソリストの名前を見てもピンとこなかった。ところがどっこい、これがとんでもない熱演だった。まず、オケの安定感が良かった。どうも協奏曲になると控えめになってしまうのだが、今日は存在感ありましたね。それもそのはず、ソリストのアレクサンドラ・スムのパワーが凄かったからだ。まずテクニックに関しては完璧ともいえるほどの腕の持ち主。実に図太い音色にも驚きだった。ヴァイオリンはかつてカヴァコスが使っていたものというから、さらに深さも申し分ない。このクソ眠くなる曲を最後まで通して聴けたことはかつてなかったといっても過言ではない(笑)。第1楽章の充実のため、思わず拍手しそうになったのは冗談ではない事実。
アンコールもテクニックを見せつけるかのような、攻撃的な曲を2曲。この人がバッハとかを弾くとどうなるのかが気になるところです。
後半はお待ちかねのワーグナー。一言、「立派!」としか言えません。「ワルキューレの騎行」は金管の実力を誇示するかのような堂々の迫力。まさかワルキューレが女騎士とは想像できないほどの勇ましさでした。なので、欲を言えばシンバルはもっと炸裂してもらっても良かったのではないかな? 一番度肝を抜かれたのは「ジークフリートの死と葬送行進曲」だろう。「ここはバイロイトか?」と行ったこともないのに、本場のワーグナーさながらな響きに酔いしれました。アクセルロッドのテンポも心地よかったのもある。弦楽器のバランスが見事で、これは全曲聴いてみたくなる出来でした。最後の「トリスタンとイゾルデ」も同様。さすがに今日はオーケストラ公演なのでここまでの繊細な音楽性を楽しめたのは、一昨年のびわ湖ホールでのオペラ公演(大阪センチュリー交響楽団)とは大きく違うところ。
今日の快演の立役者は指揮者のアクセルロッドだった。前回の京響登場の時も素晴らしい演奏を披露してくれましたが、今回も期待を裏切らない内容だった。プレトークではバーンスタインに大物になると言われた話などをしていましたが、冗談の話ではなく、本当に素晴らしい指揮者だということを実演で示したということだろう。
もう今年も終わっていくが、ワーグナー特集、やっとけば良かったんじゃないでしょうか?全国のワグネリアンも黙ってはいなかったと思います。
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