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2007年8月19日 ルツェルン祝祭管弦楽団
ルツェルン・フェスティバル(カルチャー・コングレスセンター,ルツェルン KKL)

演奏曲目および評価

マーラー/交響曲第3番

演奏者(指揮者・ソリスト)

メゾ・ソプラノ:アンナ・ラーソン
合唱:アーノルト・シェーンベルク合唱団
合唱:テルツ少年合唱団
指揮:クラウディオ・アバド

感想・短評

あぁ、ついにやっちゃいました。コンサート熱も海外にまで伸ばしてしまいました (>_<)。昨年、東京で開催された「ルツェルン・フェスティバル in 東京」の豪華さに魅了された記憶は新しいが、今年は本場のスイスにまで足を運ぶことになろうとは・・・


ルツェルンのシンボルといえる「カペル橋」

城壁から見た街並み

ルツェルンはスイスの中でも最も格調高いリゾート地の1つ。街の美しさや過ごしやすさは際だっている。過去にも多くの音楽家が惹きつけられた場でもあり、ルツェルン音楽祭の歴史を考えてみても納得することが多い。演奏会の日の午前中にはワーグナーが過ごしたという家(現在は記念館)にも訪れてみた。ほんと、景色も良くのんびりしていて創作がはかどる気がしました。ちなみに、現在も多くの著名人が住んでいるとのことだが、アシュケナージもルツェルン在住とのことだ。

さて、演奏会の会場となるKKLはルツェルン中央駅隣のフィーアヴァルトシュテッテ湖畔にあり、フランス人建築家ジャン・ヌーベルの代表作品といわれる非常に美しい外観を持つ複合施設。40メートル以上も張り出した屋根のひさしに映る観光船の明かりなどが魅力的で、この建物を見るだけでも十分に価値がある。日本のホールとは違う趣がありますね。

この日の演奏会は、ルツェルン音楽祭の中でも目玉となる、アバド指揮ルツェルン祝祭管弦楽団の演奏。それもマーラーの3番と来たら、ファンなら飛び上がって喜ぶ演目だろう。実は、今日のチケットも手にはいるかどうかは分からない状態にあった。早々に完売している公演であり、旅行会社でも直前まで分からないとのことだったからだ。幸いにも1週間ほど前に確保できたとの連絡があった。ギリギリになったおかげもあり、1番目のカテゴリー(つまりS席)をGETできた。だが、前から3列目という舞台に近すぎる座席なので、普段なら絶対に買わない位置だ。ただし、ここはお祭りの場。間近で見られる楽しみも大きい。会場内は正装をした人も多く、VIPらしき人だらけで肩身が狭かった。失礼がないようにと、ジャケット着用で行ったのだが、それでもカジュアルすぎるほどだった(汗)。

超満員のなか演奏会が始まる。座席の関係上メンバー全員を確認できなかったが、ルツェルン祝祭管弦楽団は昨年東京で聴いた時とほぼ同じメンバー。コンマスはベルリン・フィルのコリャ・ブラッハーだ。メゾソプラノの出番は第4楽章からだが、最初からアバドとともに登場した。冒頭から何やら不安定な音楽が流れ出す。萎縮したようなホルンに始まり、さらにテンポが定まらない。アバドにしてはかなり遅めのテンポだ。各奏者の技量が高いために個別に耳をやると素晴らしい音楽が聴けるのだが、まとまりとしては今ひとつしっくり来なかった。第1楽章の中盤から、ようやくアバドならではの流麗な音楽が曲を支配する。何より、金管陣の働きが素晴らしい。特にトランペットのフリードリッヒは終始抜群の演奏を披露。冒頭こそ怪しかったがホルンも見事だった。そして長い長い第1楽章は尻上がりに調子を上げて熱狂的に終わった。ホールの残響も心地よく、この時点で結構満足した(笑)。ルツェルンのホールは「冷たい」と聞いていたが、石膏プレート張りの壁面での残響はさわやかに鳴り響いていて個人的には好みだ。


KKLメインエントランス

夜は特に美しいKKL外観

車で会場を後にするアバド

第2楽章は個人技に花が咲き、アバドはサポートする程度といったもの。目の前で弾くブラッハーのヴァイオリンに見とれてました(笑)。美しくはあったものの、ちょっと印象に残らなかったかも。。。第3楽章は完成度高かったです。何といっても舞台裏で吹くポストホルン(バイエルン放送交響楽団首席トランペット奏者のハーネス・ロイビンが担当)が決め手です。後半で2カ所ほどミスったのが痛いが、素晴らしい音色でした。天国と現世を対比しているようでウマイ演奏でした。

第4楽章はいよいよメゾソプラノが登場。近すぎるためか、ホールに響き渡る歌声を楽しむことはできなかったが、息づかいが聞こえてしっかりと楽しめました。もう少し深みが欲しいかなぁと思いましたけど(苦)。しかし、ラーソンは残念なことに痛恨のフライングミスをしてしまった。瞬間的にアバドが止めに入ったが間に合わなかった。これほどの大物でもミスするんですね。ある意味貴重でした。第5楽章は合唱も入って広がりはあったが、ラーソンは引きずっているのか、もう一つ伸びか感じられなかった。

そして第5楽章とつなぐように第6楽章に入る。第1楽章とは対照的に弦楽器のメロディが実に美しい。もちろん金管もほぼ完璧な働きを魅せた。演奏はウマイのに、なぜか1998年にベルリン・フィルで聴いた時ほどの感動が襲ってこなかったのは残念。聴き慣れちゃったのかなぁ。でも良い演奏であったことには違いはない。最後の音が鳴りやんでも、アバドが指揮棒を下ろしても、一向に拍手が起きない。20秒近くたってから大歓声が起きた。日本では考えられないな〜。さすがヨーロッパの観客は音楽の聴き方を心得てる。このことが一番感動したかも(笑)。そのあとは、恒例?のオールスタンディング状態。熱狂的なアバディアンたちに混じってしっかり立ってきました(^^; 2階の客席からは花吹雪が舞う(といっても生花)楽しい光景。いや〜、お祭りは良いですね〜。演奏の良し悪しなんぞ吹っ飛びましたわ。

終演後はいつものように?楽屋口へ。コリャ・ブラッハー(vn)、ハーネス・ロイビン(tr)、ザビーネ・マイヤー(cl)、アンナ・ラーソン(msop)のサインをGET。40分以上待ってアバドも出てきたけど、残念ながらサインはもらえず(T.T)。しかし、念願の音楽祭を海外で堪能できて本当に幸運だった。頻繁に来ることはできないけど、またいつかは来たいと思う、そんな音楽祭でした。

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