「朝比奈隆を越えた」。そういうまさに会心の演奏会だった。
今日を含め定期2公演は早くから全席完売するほどの注目公演だった。理由は3点挙げられる。
1. 大フィルの18番とするブルックナー演奏であること
2. 大植氏がその大フィルでブルックナーを演奏するということ
3. 朝比奈隆の誕生日(7/9)を記念しての演奏会であること
会場は久々の満員御礼。補助席が設置されるなど大植=大フィルによるブルックナーには大いなる期待が寄せられた。なお、今日演奏のブルックナー8番は、過去に大フィルは22回演奏しているそうだが、全て朝比奈氏の指揮によるもの。大フィルにとって得意曲だが、初めて異なる指揮者にての演奏だというのも非常に興味深い。
さすがに思い入れのある曲だけあり、冒頭から緊張感がほとばしる。団員の方はいつもと異なる気合いの入れようなのだ。全ての音に意味を持たせるかのごとく丁寧に奏でられていく。以前の大フィルであると大ざっぱで、アンサンブルの均整がとれない演奏だった(朝比奈氏の指揮で聴いたブルックナー8番はバランスがあまりにも悪かった)。しかし、最近の大フィルは非常にアンサンブルが整ってきており、ミスもかなり少ない。今日の演奏もそれに輪をかけるかのように丁寧だった。強いて苦言を言うならホルンが少し不安定だったこと(ワグナーチューバも相変わらず不安定)。また強奏部分では金管がごまかし気味な箇所もいくつかあったが。それらを強烈にカバーしたのが弦楽器とティンパニである。特にヴィオラを始めとする低弦がしっかり鳴らしていたのはうれしい。ティンパニもいつも以上にズシッと響く強打で全体を引き締めていた。
全体を通して満足の行く演奏だったが、特に長い第3楽章が非常に美しかった。退屈しがちで眠くなるこの楽章をしっかりと聴かせてくれたのはさすがだ。もちろん第4楽章の圧倒的音響には鳥肌が立つ思い。フィナーレが終わるまで全く手抜きなく完全燃焼した大植氏。いつもなら音が消えかけるところで拍手が起こるものだが、一息ついた後で拍手が起きたのは質の高さを物語っている一面だった。
大植氏は完全に自分の指揮で大フィルのブルックナーをものにしていた。朝比奈=大フィルという概念はこれで終わりを迎え、伝説となった。そういう意味で歴史的にも貴重な演奏会だったのではないだろうか?
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