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2004年5月22日 ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団
(京都コンサートホール)

演奏曲目および評価

マーラー  交響曲第9番

演奏者(指揮者・ソリスト)

指揮: ワレリー・ゲルギエフ

感想・短評

ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団さすがゲルギエフ。この言葉に尽きる演奏会だった。

京都コンサートホールは久しぶりだったが、相変わらず観客の数がいまいち多くない。話題のゲルギエフ=ロッテルダムpoのマーラーと言えども、8割弱くらいの客数だった。大阪だと間違いなく満員御礼だろう。やはり大阪方面から北山は遠いということなのか。。。

さて、ロッテルダム・フィルはオランダを代表するオケだが、どうしても二流オケという感が否めない。開演前も日本のオケのように必死に練習していたくらいだから一流というにはちょっと遠いか。その練習・チューニングも終わり、しばらく経った後、ゲルギエフがおもむろに登場。そして、さっきまで二流だと思っていたオケが、ゲルギエフの指揮が始まったとたん姿を変えた。「カリスマ指揮者」「鬼才」などとよく表現されているその言葉にウソはなかった。CDではいろんな演奏を聴いているマーラーの9番の中でも、今日ほど死に対する恐れを生々しく表現した演奏は聴いたことがない。ゲルギエフの表情も恐ろしく(笑)、まったく息を呑む暇がないほど鬼気迫る緊張感が全曲を通して続く。先ほども書いたように、オケはうまいのだが、それほど絶賛するほどでもなければ目立つパートがあるわけでもない。金管は安定しており、ホルンはうまく鳴らしていた。木管はそれほど特徴はなく並のものだった。ただ、往年のコンセルトヘボウを思わせるような渋く響く弦楽器には魅了された。全体が溶け合って輪郭が若干不明確ではあったものの、こういった曲では非常に効果的になる。ゲルギエフにはこのようなオケを自分の手足のように変身させてしまう魔力があるのだから驚きだ。おそらく彼でなければ「上手い演奏」という感想にとどまっていたことは明白だ。

圧巻は第3楽章と第4楽章。第3楽章では、前半こそちょっと崩壊気味な部分もあったが、後半になってゲルギエフの本領が発揮されると、オケも連動するように立ち直った。急激なテンポアップ。そして、いやらしいほどの大きなタメ。この複雑な楽章を明確かつ圧倒的な安定感を持って締めくくった。そして、一気にテンポを落として第4楽章に突入。ここでの弦楽器の響きはコンセルトヘボウを上回ったほどの充実したもの。これ以上ないほどしつこいくらいの歌わせ方。死への恐怖が死への諦めに急転落だ。弦楽器の響き、うねり、そして静寂。魂が抜けてしまうほどの熱演に、会場は曲が終わった後も20秒ほど微動だにしなかった(鈴を鳴らしたヤツと飴の袋をジャラジャラ鳴らしたヤツの2人以外)。

ゲルギエフの魔法から開放された後の聴衆は、何かに取り憑かれた信者のように賛辞の拍手と奇声を上げ続けた。今回の演奏は、指揮者の力量が明確に表れた稀なるもの。今もっとも注目の指揮者は、今もっとも感動的な演奏をする指揮者であることを体験できただけでも貴重な演奏会であった。しかし、あまりの緊迫感のある演奏に、終演後は魂が抜けきったくらいに疲労感が残った。

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