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2010年5月16日 クリスチャン・ツィメルマン ピアノ・リサイタル
(滋賀県立芸術劇場 びわ湖ホール)

演奏曲目および評価

ショパン生誕200年記念
<オール・ショパン・プログラム>
夜想曲第5番 嬰ヘ長調 op.15-2
ピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調 op.35
スケルツォ第2番 変ロ短調 op.31
ピアノ・ソナタ第3番 ロ短調 op.58
舟歌 嬰ヘ長調 op.60

演奏者(指揮者・ソリスト)

ピアノ:クリスチャン・ツィメルマン

感想・短評

びわ湖ホールの大ホールだというのにほぼ満員という盛況ぶり。ツィメルマンの人気振りがうかがえます。ちょうど1年前に西宮で聴いたので、今回はホールを変えて2回目。完璧なまでの表現が今回も楽しめるか?

ステージ上はいつもより照明が暗い。ツィメルマンが演奏を始めるともっと照明が絞られて、ピアノ付近が柔らかに浮かんでいる程度になった。先月のムターのヴァイオリンといい、演奏環境までもカスタマイズされるのは大物の証拠だろうか?

軽やかさとか、流暢さとか、外見での美しさを追うものとは違う聴き応えのある演奏だった。曲にも因るのだが、少し重たさがあり華やかな感じはしなかった。一音一音熟考しながら奏でているというか、非常に密度の濃い音楽だった。最初の「ノクターン」から優雅に、そして少し物悲しく歌う。ただ、ホールがいまひとつで、舞台上で音がこもった上に、響きすぎるため輪郭が曖昧になっていたのが残念だ。

続く「ピアノ・ソナタ第2番」もダイナミズムが大きいために複雑な反響になっていた。まぁ、それを補って余りある素晴らしい演奏でしたけど。やはり葬送行進曲といわれる第3楽章は秀逸。始めの深い一音でノックアウトされました。CDでも聴いているかのような完璧な音色。テンポをグッと落としていたので、ものすごく意味深な演奏でした。葬送のあとの叙情に満ち溢れたメロディは極上のきわみ。あのピアニッシモがホール全体に響き渡る様は筆舌に尽くしがたい。

前半最後の「スケルツォ第2番」は個人的に今日一番の名演だったと思う。ピアノ曲には詳しくないが、模範演奏とはこういうものなんじゃないだろうか? 歌心に満ちていて、ショパンの真髄を聴いた気がしました。。。

後半も大作の「ピアノ・ソナタ第3番」。この曲は初めて?ピアノ演奏会を聴いた時の曲なのでよく知っているのだが、やはり別モノに聴こえるほど彫りの深い演奏でした。やっぱり第3楽章が素晴らしかった。第3楽章に入る際に、一音弾きかけて息を整えなおしたツィメルマン。妥協を許さないという心意気を垣間見た瞬間だったように思います。最後は「舟歌」。目を閉じて聴いていると、まさにヴェネチアのゴンドラが目に浮かぶようで、鼻歌混じりな舟歌に聞こえてきました(笑)。

しかし、問題なのは今日の聴衆だ。咳払いが多すぎで、自分のタイミングで演奏に入っていくツィメルマンだけに、騒がしいまま曲に突入する場面が多かったです。さらに、拍手もフライングしすぎ。ほとんどの曲では残響を聴くことなく拍手が始まってしまいました。勢いに任せたコンサートではないことくらいは理解して聴いてもらいたいものです。残響を堪能できなかったのは、半分くらい楽しみを失ったに等しいと思います。

いい演奏だったが、マナーに問題を感じたので、微妙な気持ちで夜空の月と金星のランデブーを眺めながら帰途に着いた。

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